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Context

title:Remon
author:Kajii, Motojiro
date:1925
source:Aozora January edition; Aozora Bunko (http://www.aozora.gr.jp/cards/000074/card424.html)
genre:fiction
subcorpus:Aozora Bunko
terms of use:Creative Commons license

 1檸檬
 2梶井基次郎
 3えたい の 知れ ない 不吉 な 塊 が 私 の 心 を 始終 圧え つけ て い た 。
 4焦躁 と 言お う か 、 嫌悪 と 言お う か ―― 酒 を 飲ん だ あと に 宿酔 が ある よう に 、 酒 を 毎日 飲ん で いる と 宿酔 に 相当 し た 時期 が やって来る 。
 5それ が 来 た の だ 。
 6これ は ちょっと いけなかっ た 。
 7結果 し た 肺尖カタル や 神経衰弱 が いけない の で は ない 。
 8また 背 を 焼く よう な 借金 など が いけない の で は ない 。
 9いけない の は その 不吉 な 塊 だ 。
 10以前 私 を 喜ば せ た どんな 美しい 音楽 も 、 どんな 美しい 詩 の 一節 も 辛抱がなら なく なっ た 。
 11蓄音器 を 聴か せ て もらい に わざわざ 出かけ て 行っ て も 、 最初 の 二三 小節 で 不意 に 立ち上がっ て しまい たく なる 。
 12何 か が 私 を 居堪ら ず させる の だ 。
 13それで 始終 私 は 街 から 街 を 浮浪 し 続け て い た 。
 14何故 だ か その 頃 私 は 見すぼらしく て 美しい もの に 強く ひきつけ られ た の を 覚え て いる 。
 15風景 にしても 壊れ かかっ た 街 だとか 、 その 街 にしても よそよそしい 表通り よりも どこ か 親しみ の ある 、 汚い 洗濯物 が 干し て あっ たり がらくた が 転がし て あっ たり むさくるしい 部屋 が 覗い て い たり する 裏通り が 好き で あっ た 。
 16雨 や 風 が 蝕ん で やがて 土 に 帰っ て しまう 、 と言った よう な 趣き の ある 街 で 、 土塀 が 崩れ て い たり 家並 が 傾き かかっ て い たり ―― 勢い の いい の は 植物 だけ で 、 時とすると びっくり さ せる よう な 向日葵 が あっ たり カンナ が 咲い て い たり する 。
 17時どき 私 は そんな 路 を 歩き ながら 、 ふと 、 そこ が 京都 で は なくて 京都 から 何百 里 も 離れ た 仙台 とか 長崎 とか ―― その よう な 市 へ 今 自分 が 来 て いる の だ ―― という 錯覚 を 起こそ う と 努める 。
 18私 は 、 できる こと なら 京都 から 逃げ出し て 誰一人 知ら ない よう な 市 へ 行っ て しまい たかっ た 。
 19第一 に 安静 。
 20がらんと し た 旅館 の 一 室 。
 21清浄 な 蒲団 。
 22匂い の いい 蚊帳 と 糊 の よく きい た 浴衣 。
 23そこ で 一 月 ほど 何 も 思わ ず 横 に なり たい 。
 24希わく は ここ が いつ の 間 に か その 市 に なっ て いる の だっ たら 。
 25―― 錯覚 が ようやく 成功 し はじめる と 私 は それから それ へ 想像 の 絵具 を 塗りつけ て ゆく 。
 26なんのことはない 、 私 の 錯覚 と 壊れ かかっ た 街 と の 二重写し で ある 。
 27そして 私 は その 中 に 現実 の 私 自身 を 見失う の を 楽しん だ 。
 28私 は また あの 花火 という やつ が 好き に なっ た 。
 29花火 そのもの は 第二 段 と し て 、 あの 安っぽい 絵具 で 赤 や 紫 や 黄 や 青 や 、 さまざま の 縞模様 を 持っ た 花火 の 束 、 中山寺の星下り 、 花合戦 、 枯れすすき 。
 30それから 鼠花火 という の は 一 つ ずつ 輪 に なっ て い て 箱 に 詰め て ある 。
 31そんな もの が 変 に 私 の 心 を 唆っ た 。
 32それから また 、 びいどろ という 色硝子 で 鯛 や 花 を 打ち出し て ある おはじき が 好き に なっ た し 、 南京玉 が 好き に なっ た 。
 33また それ を 嘗め て みる の が 私 にとって なん と も いえ ない 享楽 だっ た の だ 。
 34あの びいどろ の 味 ほど 幽か な 涼しい 味 が ある もの か 。
 35私 は 幼い 時 よく それ を 口 に 入れ て は 父母 に 叱ら れ た もの だ が 、 その 幼時 の あまい 記憶 が 大きく なっ て 落ち魄れ た 私 に 蘇えっ て くる 故 だろう か 、 まったく あの 味 に は 幽か な 爽やか な なんとなく 詩美 と言った よう な 味覚 が 漂っ て 来る 。
 36察し は つく だろう が 私 に は まるで 金 が なかっ た 。
 37とは言え そんな もの を 見 て 少し でも 心 の 動き かけ た 時 の 私 自身 を 慰める ため に は 贅沢 という こと が 必要 で あっ た 。
 38二 銭 や 三 銭 の もの ―― と 言っ て 贅沢 な もの 。
 39美しい もの ―― と 言っ て 無気力 な 私 の 触角 に むしろ 媚び て 来る もの 。
 40―― そう言った もの が 自然 私 を 慰める の だ 。
 41生活 が まだ 蝕ま れ て い なかっ た 以前 私 の 好き で あっ た 所 は 、 たとえば 丸善 で あっ た 。
 42赤 や 黄 の オードコロン や オードキニン 。
 43洒落 た 切子細工 や 典雅 な ロココ趣味 の 浮模様 を 持っ た 琥珀色 や 翡翠色 の 香水壜 。
 44煙管 、 小刀 、 石鹸 、 煙草 。
 45私 は そんな もの を 見る の に 小一 時間 も 費す こと が あっ た 。
 46そして 結局 一 等 いい 鉛筆 を 一 本 買う くらい の 贅沢 を する の だっ た 。
 47しかし ここ も もう その 頃 の 私 にとって は 重くるしい 場所 に 過ぎ なかっ た 。
 48書籍 、 学生 、 勘定台 、 これら は みな 借金取り の 亡霊 の よう に 私 に は 見える の だっ た 。
 49ある 朝 ―― その 頃 私 は 甲 の 友達 から 乙 の 友達 へ という ふう に 友達 の 下宿 を 転々 と し て 暮らし て い た の だ が ―― 友達 が 学校 へ 出 て しまっ た あと の 空虚 な 空気 の なか に ぽつねんと 一人 取り残さ れ た 。
 50私 は また そこ から 彷徨い出 なけれ ば なら なかっ た 。
 51何 か が 私 を 追いたてる 。
 52そして 街 から 街 へ 、 先 に 言っ た よう な 裏通り を 歩い たり 、 駄菓子屋 の 前 で 立ち留まっ たり 、 乾物屋 の 乾蝦 や 棒鱈 や 湯葉 を 眺め たり 、 とうとう 私 は 二 条 の 方 へ 寺町 を 下り 、 そこ の 果物屋 で 足 を 留め た 。
 53ここ で ちょっと その 果物屋 を 紹介 し たい の だ が 、 その 果物屋 は 私 の 知っ て い た 範囲 で 最も 好き な 店 で あっ た 。
 54そこ は 決して 立派 な 店 で は なかっ た の だ が 、 果物屋 固有 の 美しさ が 最も 露骨 に 感ぜ られ た 。
 55果物 は かなり 勾配 の 急 な 台 の 上 に 並べ て あっ て 、 その 台 という の も 古び た 黒い 漆塗り の 板 だっ た よう に 思える 。
 56何 か 華やか な 美しい 音楽 の 快速調 の 流れ が 、 見る 人 を 石 に 化し た という ゴルゴンの鬼面 ―― 的 な もの を 差しつけ られ て 、 あんな 色彩 や あんな ヴォリウム に 凝り固まっ た という ふう に 果物 は 並ん で いる 。
 57青物 も やはり 奥 へ ゆけ ば ゆく ほど 堆高く 積ま れ て いる 。
 58―― 実際 あそこ の 人参葉 の 美しさ など は 素晴しかっ た 。
 59それから 水 に 漬け て ある 豆 だとか 慈姑 だとか 。
 60また そこ の 家 の 美しい の は 夜 だっ た 。
 61寺町通 は いったい に 賑か な 通り で ―― と言って 感じ は 東京 や 大阪 より は ずっと 澄ん で いる が ―― 飾窓 の 光 が おびただしく 街路 へ 流れ出 て いる 。
 62それが どう し た わけ か その 店頭 の 周囲 だけ が 妙 に 暗い の だ 。
 63もともと 片方 は 暗い 二条通 に 接し て いる 街角 に なっ て いる ので 、 暗い の は 当然 で あっ た が 、 その 隣家 が 寺町通 に ある 家 にもかかわらず 暗かっ た の が 瞭然 し ない 。
 64しかし その 家 が 暗く なかっ たら 、 あんな に も 私 を 誘惑 する に は 至ら なかっ た と 思う 。
 65もう 一 つ は その 家 の 打ち出し た 廂 な の だ が 、 その 廂 が 眼深 に 冠っ た 帽子 の 廂 の よう に ―― これ は 形容 というより も 、 「 おや 、 あそこ の 店 は 帽子 の 廂 を やけに 下げ て いる ぞ 」 と 思わ せる ほど な ので 、 廂 の 上 は これ も 真暗 な の だ 。
 66そう 周囲 が 真暗 な ため 、 店頭 に 点け られ た 幾 つ も の 電燈 が 驟雨 の よう に 浴びせかける 絢爛 は 、 周囲 の 何者 に も 奪わ れる こと なく 、 ほしいまま に も 美しい 眺め が 照らし出さ れ て いる の だ 。
 67裸 の 電燈 が 細長い 螺旋棒 を きりきり 眼 の 中 へ 刺し 込ん で くる 往来 に 立っ て 、 また 近所 に ある 鎰屋 の 二 階 の 硝子窓 を すかし て 眺め た この 果物店 の 眺め ほど 、 その 時どき の 私 を 興がら せ た もの は 寺町 の 中 で も 稀 だっ た 。
 68その 日 私 は いつになく その 店 で 買物 を し た 。
 69というのは その 店 に は 珍しい 檸檬 が 出 て い た の だ 。
 70檸檬 など ごく ありふれ て いる 。
 71が その 店 という の も 見すぼらしく は ない までも ただ あたりまえ の 八百屋 に 過ぎ なかっ た ので 、 それ まで あまり 見かけ た こと は なかっ た 。
 72いったい 私 は あの 檸檬 が 好き だ 。
 73レモンエロウ の 絵具 を チューブ から 搾り出し て 固め た よう な あの 単純 な 色 も 、 それから あの 丈 の 詰まっ た 紡錘形 の 恰好 も 。
 74―― 結局 私 は それ を 一 つ だけ 買う こと に し た 。
 75それ から の 私 は どこ へ どう 歩い た の だろう 。
 76私 は 長い 間 街 を 歩い て い た 。
 77始終 私 の 心 を 圧え つけ て い た 不吉 な 塊 が それ を 握っ た 瞬間 から いくら か 弛ん で 来 た と みえ て 、 私 は 街 の 上 で 非常 に 幸福 で あっ た 。
 78あんな に 執拗かっ た 憂鬱 が 、 そんな もの の 一 顆 で 紛らさ れる ―― あるいは 不審 な こと が 、 逆説的 な ほんとう で あっ た 。
 79それにしても 心 という やつ は なん という 不可思議 な やつ だろう 。
 80その 檸檬 の 冷たさ は たとえよう も なく よかっ た 。
 81その 頃 私 は 肺尖 を 悪く し て い て いつも 身体 に 熱 が 出 た 。
 82事実 友達 の 誰彼 に 私 の 熱 を 見せびらかす ため に 手 の 握り合い など を し て みる の だ が 、 私 の 掌 が 誰 の よりも 熱かっ た 。
 83その 熱い 故 だっ た の だろう 、
 84握っ て いる 掌 から 身内 に 浸み透っ て ゆく よう な その 冷たさ は 快い もの だっ た 。
 85私 は 何 度 も 何 度 も その 果実 を 鼻 に 持っ て いっ て は 嗅い で み た 。
 86それ の 産地 だ という カリフォルニヤ が 想像 に 上っ て 来る 。
 87漢文 で 習っ た 「 売柑者之言 」 の 中 に 書い て あっ た 「 鼻 を 撲つ 」 という 言葉 が 断れぎれ に 浮かん で 来る 。
 88そして ふかぶかと 胸一杯 に 匂やか な 空気 を 吸い込め ば 、 ついぞ 胸一杯 に 呼吸 し た こと の なかっ た 私 の 身体 や 顔 に は 温い 血 の ほとぼり が 昇っ て 来 て なんだか 身内 に 元気 が 目覚め て 来 た の だっ た 。
 89実際 あんな 単純 な 冷覚 や 触覚 や 嗅覚 や 視覚 が 、 ずっと 昔 から これ ばかり 探し て い た の だ と 言い たく なっ た ほど 私 に しっくり し た なんて 私 は 不思議 に 思える
 90―― それ が あの 頃 の こと な ん だ から 。
 91私 は もう 往来 を 軽やか な 昂奮 に 弾ん で 、 一種 誇りか な 気持 さえ 感じ ながら 、 美的装束 を し て 街 を 歩 し た 詩人 の こと など 思い浮かべ て は 歩い て い た 。
 92汚れ た 手拭 の 上 へ 載せ て み たり マント の 上 へ あてがっ て み たり し て 色 の 反映 を 量っ たり 、 また こんな こと を 思っ たり 、
 93―― つまり は この 重さ な ん だ な 。
 94その 重さ こそ 常づね 尋ねあぐん で い た もの で 、 疑い も なく この 重さ は すべて の 善い もの すべて の 美しい もの を 重量 に 換算 し て 来 た 重さ で ある とか 、 思いあがっ た 諧謔心 から そんな 馬鹿げ た こと を 考え て み たり ――
 95なに が さて 私 は 幸福 だっ た の だ 。
 96どこ を どう 歩い た の だろう 、
 97私 が 最後 に 立っ た の は 丸善 の 前 だっ た 。
 98平常 あんな に 避け て い た 丸善 が その 時 の 私 に は やすやす と 入れる よう に 思え た 。
 99「 今日 は 一 つ 入っ て み て やろ う 」
 100そして 私 は ずかずか 入っ て 行っ た 。
 101しかし どう し た こと だろう 、 私 の 心 を 充たし て い た 幸福 な 感情 は だんだん 逃げ て いっ た 。
 102香水 の 壜 に も 煙管 に も 私 の 心 は のしかかっ て は ゆか なかっ た 。
 103憂鬱 が 立て罩め て 来る 、
 104私 は 歩き 廻っ た 疲労 が 出 て 来 た の だ と 思っ た 。
 105私 は 画本 の 棚 の 前 へ 行っ て み た 。
 106画集 の 重たい の を 取り出す の さえ 常 に増して 力 が 要る な ! と 思っ た 。
 107しかし 私 は 一 冊 ずつ 抜き出し て は みる 、 そして 開け て は みる の だ が 、 克明 に はぐっ て ゆく 気持 は さらに 湧い て 来 ない 。
 108しかも 呪わ れ た こと に は また 次 の 一 冊 を 引き出し て 来る 。
 109それ も 同じ こと だ 。
 110それでいて 一 度 バラバラ と やっ て み なくて は 気 が 済ま ない の だ 。
 111それ 以上 は 堪ら なく なっ て そこ へ 置い て しまう 。
 112以前 の 位置 へ 戻す こと さえ でき ない 。
 113私 は 幾 度 も それ を 繰り返し た 。
 114とうとう おしまい に は 日頃 から 大好き だっ た アングル の 橙色 の 重い 本 まで なお いっそう の 堪えがたさ の ため に 置い て しまっ た 。
 115―― なん という 呪わ れ た こと だ 。
 116手 の 筋肉 に 疲労 が 残っ て いる 。
 117私 は 憂鬱 に なっ て しまっ て 、 自分 が 抜い た まま 積み重ね た 本 の 群 を 眺め て い た 。
 118以前 に は あんな に 私 を ひきつけ た 画本 が どう し た こと だろう 。
 119一 枚 一 枚 に 眼 を 晒し 終わっ て 後 、 さて あまり に 尋常 な 周囲 を 見廻す とき の あの 変 に そぐわ ない 気持 を 、 私 は 以前 に は 好ん で 味わっ て い た もの で あっ た 。
 120「 あ 、 そう だ そう だ 」
 121その 時 私 は 袂 の 中 の 檸檬 を 憶い出し た 。
 122本 の 色彩 を ゴチャゴチャ に 積みあげ て 、 一 度 この 檸檬 で 試し て み たら 。
 123「 そう だ 」
 124私 に また 先ほど の 軽やか な 昂奮 が 帰っ て 来 た 。
 125私 は 手当たり次第 に 積みあげ 、 また 慌しく 潰し 、 また 慌しく 築きあげ た 。
 126新しく 引き抜い て つけ加え たり 、 取り去っ たり し た 。
 127奇怪 な 幻想的 な 城 が 、 その たび に 赤く なっ たり 青く なっ たり し た 。
 128やっと それ は でき上がっ た 。
 129そして 軽く 跳りあがる 心 を 制し ながら 、 その 城壁 の 頂き に 恐る恐る 檸檬 を 据えつけ た 。
 130そして それ は 上出来 だっ た 。
 131見わたす と 、 その 檸檬 の 色彩 は ガチャガチャ し た 色 の 階調 を ひっそり と 紡錘形 の 身体 の 中 へ 吸収 し て しまっ て 、 カーン と 冴えかえっ て い た 。
 132私 は 埃っぽい 丸善 の 中 の 空気 が 、 その 檸檬 の 周囲 だけ 変 に 緊張 し て いる よう な 気 が し た 。
 133私 は しばらく それ を 眺め て い た 。
 134不意 に 第二 の アイディア が 起こっ た 。
 135その 奇妙 な たくらみ は むしろ 私 を ぎょっと さ せ た 。
 136―― それ を その まま に し て おい て 私 は 、 なに喰わぬ 顔 を し て 外 へ 出る 。
 137私 は 変 に くすぐったい 気持 が し た 。
 138「 出 て 行こ う かなあ 。
 139そう だ 出 て 行こ う 」
 140そして 私 は すたすた 出 て 行っ た 。
 141変 に くすぐったい 気持 が 街 の 上 の 私 を 微笑ま せ た 。
 142丸善 の 棚 へ 黄金色 に 輝く 恐ろしい 爆弾 を 仕掛け て 来 た 奇怪 な 悪漢 が 私 で 、 もう 十 分 後 に は あの 丸善 が 美術 の 棚 を 中心 と し て 大爆発 を する の だっ たら どんな に おもしろい だろう 。
 143私 は この 想像 を 熱心 に 追求 し た 。
 144「 そう し たら あの 気詰まり な 丸善 も 粉葉みじん だろう 」
 145そして 私 は 活動写真 の 看板画 が 奇体 な 趣き で 街 を 彩っ て いる 京極 を 下っ て 行っ た 。