コーパス概要 タグ 文字列検索 ツリー検索
クレジット
English
ABC

      コンテキスト表示 について      Leaf-ancestor コンテキスト Leaf-root コンテキスト      括弧付きツリーをダウンロード

aozora_Sakaguchi-1948のコンテキスト表示

title Keigoron
author Sakaguchi, Ango
date 1948
source Aozora Bunko (https://www.aozora.gr.jp/cards/001095/card42841.html)
genre essay
subcorpus Aozora Bunko
terms of use Creative Commons license


 1敬語論
 2坂口安吾
 3インド の 昔 に 学者 が 集っ て 相談 し た 。
 4どう も 俗人ども と 同じ 言葉 を 使っ た ん じゃ 学問 の 尊厳 に かゝわる 。
 5学者 は 学者 だけ の 特別 な 言葉 を 使わ なけれ ば なら ぬ 。
 6そこで その ころ の インド の 俗語 ( パーリ語 と いう ) を 用い ない こと に し て 、 学者 だけ の 特別 の 言葉 を つくっ た 。
 7これ を サンスクリット ( 梵語 ) と 称する の で ある 。
 8又 、 近世 に於て は 、 国際間 に 共通 の 言葉 が なけれ ば なら ぬ という ので 、 ラテン語 を もと に し て エスペラント という もの が でき た 。
 9こういう 人為的 な 作物 と 違っ て 、 現在 使わ れ て いる 言葉 は 、 自然発生的 な もの で 、 時代時代 の 変化 を うけ つゝ 今日 に 及ん で いる もの 、 日本文法 などゝいう もの は 近世 の もの 、 先ず 言葉 が あっ て 、 のち に 、 文法 という もの で 分類整理 し た に すぎ ない 。
 10言葉 は 時代的 な もの で ある 。
 11生き て いる 物 だ 。
 12生活 や 感情 が 直接 こもっ て いる もの だ 。
 13だから 、 生活 や 感情 によって 動き が あり 、 時代的 に 変化 が ある 。
 14エート 、 それ は …… と 考える 。
 15ソレ ハ ネー と 考えこむ 。
 16ソレ ハネー の ネー なんか イラネエ ジャ ナイ カ 、 と 怒っ た って ムリ だ 。
 17標準語 という もの を 堅く 定め て 、 これ 以外 の クズレ タ 言葉 を 使う な 、 と 云っ て も 、 これ が 文章上 だけ の 問題 なら とにかく 、 日常 の 言語生活 に於て は 、 人間 の 感情 、 趣味 など が 言葉 を はみだし 、 言葉 を ひきずる よう に なり 、 おのずから クズレ ざる を 得 ない 。
 18ソウダワ 、 とか 、 ダワヨ 、 アソバセ 、 という よう な 女性語 は 流行 の 衣裳 や 化粧 と 同じ よう な 、 一種 の 装飾的 な 自己表現 で も ある 。
 19女性 に ユニフォーム を 定め て 、 これ 以外 の 如何なる 衣服 も 用い て は なら ぬ 、 そういう 社会制度 を 望ま れる 人士 は 女性語 を 禁じ て 標準語 を 強制 す べき であろう が 、 その よう な 社会制度 が 不当 で ある かぎり 、 女性語 の 禁止 も 無用 の こと で あろ う 。
 20つまり 、 言葉 という もの は 、 言語 だけ の 独立 し た 問題 で は なくて 、 それ を 用いる 人間 の 嗜好 や 、 教養 が 言葉 の 根本的 な エネルギー を なし て いる の で ある 。
 21その エネルギー が 言葉 を 時代的 に 変化 せ しめ て 行く もの で 、 言葉 の 向上 を 望む なら 、 教養 の 向上 を 望む 以外 に 手 は ない 。
 22ザアマス夫人 という の が ある 。
 23キザ の 見本 だ と いう ので 漫文漫画 に 諷刺 さ れ 世間 の 笑いもの に なっ て いる から 、 自粛 する か と 思う と そう じゃ ない 、
 24伯爵夫人 でも 重役夫人 で も ない 熊さん 八さん の オカミサン が 、 とたん に ザアマス を やり だし て 、 人 に 笑わ れ て 得々 と し て いる 。
 25人 に 笑わ れる こと によって 、 自ら も 伯爵夫人 の 威厳 を 身につけ た 如く に 心得 て いる らしい 。
 26要するに 言葉 の 問題 は 教養 自体 が 問題 な の だ 。
 27ヨーロッパ に 女性語 が ない という の は マチガイ だ 。
 28フランス に も 女性語 は ある 。
 29学校 で 先生 が 出欠 を とる 。
 30ハイ と 答える に 、 男学生 は プレザン と 答え 、 女学生 は プレザント と 答える 。
 31語尾 に 余計 物 が つく こと 、 日本 の ワヨ の 如し で ある 。
 32よしんば 言葉 に 変化 は なく とも 、 女性的 な 抑揚 は 男性 と は 別 で あり 、 女性 の 抑揚 も 亦 個性 によって それぞれ の 相違 が あり 、 かかる 表現上 の 相違 と 、 言葉 自体 の 相違 と 、 本質 に於て は 異る もの で は ない 筈 だ 。
 33本質 は 何 か 。
 34即ち 、 嗜好 や 教養 で ある 。
 35
 36敬語 の 問題 も 亦 、 女性語 と 同じ こと だ 。
 37オ茶碗 だ 、
 38オ箸 だ 、
 39食器 に まで オ の 字 を つけ て 怪しからん 。
 40ナゼ 怪しからん 。
 41ナゼ 怪しからん て ッ た ッて 食器 に オ の 字 を つけ て 敬う 必要 が ある か 。
 42ナルホド 必要 は ない 、
 43然し 、 言葉 は 必要 の 問題 で ある か 、
 44然らば 、 茶碗 や 箸 など という 言葉 に 、 必ず そう で なけれ ば なら ぬ 必要 や 必然性 が ある の で ある か 。
 45これ は 、 どう も 、 ない らしい 。
 46ナゼ 箸 と よば ね ば なら ぬ か 。
 47二 字 も ある なんて ゼイタク な 。
 48ハ 、 で は いかん か 、
 49シ 、 で は いかん か 。
 50つまり 、 敬語 など 突ッつき 、 言葉 の 合理性 など という こと を 言い だす と 、 言葉 全体 を 新た に メートル法式 に つくりあげ ない 限り 、 合理化 の 極まる 果 は ない の で ある 。
 51敬語 に あらわさ れる 階級観念 は 民主々義時代 に ふさわし から ぬ と 申し て も 、 旧態依然 たる 生活様式 が あり 観念 が ある から に は 仕方がない 。
 52言葉 だけ 変え て み た って 、 実質的 に は 何ら の 意味 も なさ ない 。
 53生活 の 実質的 な もの が 、 おのずから 言葉 を 選び育てる の で ある から 、 問題 は その 実質 の 方 で ある 。
 54イギリス の 笑い話 に 、 小説 の 第一 行目 から 人 の 注意 を 惹く ため に 「 侯爵夫人 は コン畜生 の バカヤロー と 怒鳴っ た 」 と 書け ば マチガイなし 、 という の が ある 。
 55つまり イギリス に は 侯爵夫人 の 使わ ない 言葉 という の が 存在 する わけ で あろ う 。
 56上流 の 言葉 、 下流 の 言葉 。
 57日本 とても 同じ こと だ 。
 58インド の 哲人 の 如く に 、 日本 に も 学者 の 言葉 という もの が ない ワケ で も ない 。
 59これ も すでに 言葉 の 階級性 で は ない か 。
 60生活 や 趣味 や 教養 に 差 が あれ ば 、 おのずから 選ん で 用いる 言葉 も 異る 。
 61敬語 も 同じ 性質 の もの に すぎ ない 。
 62フランス に は 「 お前よび 」 という の が ある 。
 63フランス に は 「 アナタ 」 の 外 に 「 オマエ 」 という 言葉 が 存在 し 、 恋人 、 夫婦 、 親友 、 など は 「 お前よび 」 という 特権 を 享楽 する こと が できる 。
 64他人 を よぶ に は アナタ と 云っ て 、 テイネイ に 分け距て ゝ おく の で ある 。
 65オマエ など ゝいう 言葉 が 存在 する の は 怪しからん 、 と いう 。
 66人 を よぶ に は 常に アナタ で なけれ ば なら ぬ 。
 67そんな こと を 力説 し て み た って 、 人 を 差別 する 気持 が あっ て 、 相手 を 自分 より 卑しい もの 、 低い もの に 見る 観念 が ある 以上 、 言葉 の 上 で だけ アナタ と よん だ って 、 なん の マジナイ に なる と いう の か 。
 68人 を 見る に 差別 の 観念 が なけれ ば 、 人 を よぶ 言葉 は おのずから 一 つ に なる に きまっ て いる し 、 かり に 英語 の 如く 人 を よぶ に 、 ユー 、 の 一 語 しか なく とも 、 差別 の 観念 の ある 限り 、 ユー の 一 語 も 発音 の ニュアンス に 色々 と 思い が 現れる 筈 で 、 やっぱり 根本 の 問題 は 言葉 の 方 に ある の で は ない 。
 69女房 を お前 と よぶ の は 男尊女卑 の 悪習 だ と いう が 、 例 が フランス の 「 お前よび 」 に ある 通り 必ずしも 男尊 で は なく 親密 の 表現 で も あり 、 他人行儀 と 云っ て 他人 の うち は テイネイ な もの だ が 、 友達 も 親密 に なる と 言葉 が ゾンザイ に なる こと 、 日本 も 「 お前よび 」 と 同断 で あり 、 女房 を お前 と よぶ の も 、 むしろ 親しさ の 表現 の 要素 が 多い であろう 。
 70たゞ 、 日本 の 場合 、 女 の 方 が 亭主 を アナタ と よぶ の が 女卑 の 証拠 だ という の も 、 一概に そう も 云え ない 。
 71男言葉 と 女言葉 の 確然 たる 日本 で 、 男女 二 つ の 呼び方 が 違っ て くる の は 当然 で 、 アナタ と よぶ こと が 嬉しい という 日本 の 女性心理 に は 、 日本 の 言語 の 慣例 を 利用 し て 、 愛情 を 自然 に 素直 に 表出 し て いる に すぎ ない と 見る 方 が 正当 で は ない か と 思う 。
 72
 73言葉 という 表面 に 現れ て いる もの だけ を 突き廻し て 、 それ だけ を 改め た って ムダ な こと だ 。
 74その 奥 に あり 、 敬語 という 形 と なっ て 現れ た 日本的生活 の 歪み という もの を 突きとめ て 、 それ を 論じる こと が 必要 で ある 。
 75お客 を もてなす に 、 ツマラナイ モノ デス ガ 、 とか 、 お口 に あい ませ ん でしょう が 、 とか と 、 妙 に 卑屈 な こと を 言う 。
 76敬語 という 妖怪 を あやつる 張本人 という の は 、 そんな 風 な 日本的生活 に 在る の だろう と 私 は 思う 。
 77今日 は ウチ の 連中 が 腕 に ヨリ を かけ た 料理 で 、 とか 、 これ は 自慢 の 家庭料理 で 、 とか 、 その 食べ物 の 性格 について 己れ の 信ずる ところ を ハッキリ 云え ば それ で よい 。
 78不出来 だ と 思っ たら 不出来 、
 79相手 の 味覚 が それ を どう 受けとる にしても 、 味覚 の 好悪 という もの は 好き好き で 論外 で ある 。
 80オセイボ だ 年始 だ と 無意味 な もの を 取っ たり 贈っ たり 、 香典 だの 香典がえし だの と 、 すべて 人間 の 真情 に 即さ ゞる 形式 が 生活 の 規矩 を なし て おり 、 生活 が 真情 に 即し て い ない の だ から 、 言葉 が 真情 に 即さ なく なる 。
 81つまり 物 自体 を 的確 に 表現 する こと が 生活 の 主要 な こと で は なくて 、 儀礼的 に 言葉 を あやつる こと に 主 たる 工夫 が ある から 、 空虚 な 内容 を 敬語 か なん か で 取り繕う 必要 も 生れ て くる わけ で あろ う 。
 82オ役人サマ 、 と云う 言葉 に は 、 その 言葉 に 即し た 生活 が 現に 存し て いる の だ し 、 親分然 と 「 オ若イ 人 」 だの 、 オ若イ 、 オ若イ 、 など という 、 みんな 言葉 に 即し た 生活 が 実在 し て 、 その 生活 が 実在 する 限り 、 その 言葉 に は ノッピキナラヌ もの が あり 、 イノチ が ある で は ない か 。
 83オ百姓 、 と いう 。
 84百姓 じゃ 軽蔑 し て いる よう だ し 、 農夫 と いう と 学問 の 書籍 の 中 の 言葉 みたい で 四角 すぎる し 、 当らず障らず 、 軽蔑 の 意 を おぎなう 意味 において オ の 字 を 上 へ つける 。
 85オ百姓 の オ の 一 字 に 複雑怪奇 な 心理的カットウ が 含ま れ 、 そして 、 そういう 心理的カットウ が 日本人 の 生活 に 実在 する ところ から 怪奇 なる 敬語 が 現れる 次第 で あっ て 、 根 は あくまで 、 生活 が 言葉 を 生ん で くる だけ だ 。
 86八ッつぁん の 女房 が とたん に ザアマス と やり だし た 裏 に は 、 それ に 相応 し た 心理上 の 生活 が あっ て の せい だ 。
 87娘 が 青年 に 、 足 を ふい て 下さら ない 、 と 云っ たり 、 オミアシ おふき 遊ばし て 、 と 云っ たり 、 足 を ふい て よ 、 と 云っ たり 、 それ に 即し た 生活 が あっ て そう 言う の で あり 、 生活 あっ て の こと だ 。
 88戦争中 の 商人 は 、 オメエ 何 が 欲しく って オレ の ウチ へ 来 た ん だい 、 という 調子 で 、 敬語 など は 、 自然 に なくなっ て い た の で ある 。
 89近ごろ は 商売仇 も 現れ て 、 お世辞 の 必要 が あっ て 、 イラッシャイ 、 毎度アリ 、 など ゝいう 言葉 も きか れる よう に なっ た が 、 かく の 如く 簡単 に 、 言葉 という もの は 生活 に 即し て いる もの な の で ある 。
 90もしも 敬語 という もの が なく 、 「 汝 何 を 吾 に 欲する や 」 という 一 語 しか ない 場合 、 戦争中 の 日本商人 は 仏頂面 に 客 を 睨めまわし て その 言葉 を 云い 、 終戦後 の 今日 は モミ手 を し て ニコヤカ に それ を 言う であろう 。
 91敬語 の 代り に モミ手 と ニコヤカ が ある わけ で 、 そこ に 実質的 な 何ら の 変り も あり は せ ぬ 。
 92日本商人 の 敬語 が 悪い と いう なら 、 モミ手 も ニコヤカ も 悪い という だけ の こと で ある 。
 93
 94言葉 という もの は 、 それ が 使用 さ れ て いる うち は 、 そこ に イノチ が ある もの だ 。
 95十 年 ぐらい 前 から 、 ラジオ や 新聞 の 天気予報 に 、 明日 は 晴レ ガチ の お天気 です 、 と やる よう に なっ た が 、 大体 古来 の 慣用 から 云え ば 、 何々 シ ガチ という の は 、 悪い 方向 に 傾い て 行く とき を 云う の で あっ て 、 病気 シ ガチ だ とか 、 貧乏 シ ガチ だ とか と 云う 。
 96決して 丈夫 に なり ガチ だの 、 金 を 儲け ガチ だの と は 言わ ない もの だ 。
 97クモリ ガチ と は 云っ た もの だ が 、 天気 の 場合 は 晴れ ガチ なんて 慣用 は なかっ た 筈 だ 。
 98けれども こうして ラジオ や 新聞 に 報じ られ て いる うち に は 、 それ が 現行 の もの と なり 、 実在 し て しまう から 仕方がない 。
 99言葉 の 場合 など は 慣用 が 絶対 だ という 法則 は ない の で ある から 、 いずれ は 文法 に 、 ガチ の 慣用 の うち で 晴レガチ だけ が 不規則 、 という よう な こと に なっ て 、 言葉 の 方 に 文法 を 動かし て 行く 力 が ある 。
 100言葉 とは 元々 そういう もの で 、 文法 が あっ て 言葉 が でき た ワケ で は なく 、 言葉 が あっ て 、 文法 が でき た の で ある 。
 101それ は 文法 に あわ ない 、 とか 何 とか 学者先生 が 叫ん で み た って 、 文法 の 空文 と ちがっ て 言葉 に こもる イノチ という もの は 死ん だ 法則 の 制し う べから ざる もの な の だ 。
 102だから 、 敬語 を 廃せ など ゝ 、 現に 行わ れ て いる 言葉 の イノチ ある 力 に向って 、 新規則 を 立て ゝ 束縛 し よう と し た って 、 何 の 効果 が ある もの で も ない 。
 103生活 さえ 改まれ ば 言葉 は カンタン に 改まる の だ 。
 104言葉 を 改め よう という 努力 など は ミジン も 必要 で は ない 。
 105見 たまえ 、
 106戦争中 の 商人 に向って 、 アリガトウ と 云っ て くれ と 頼ん だ って 、 言っ て くれる もの じゃ ない 。
 107国民酒場 の オヤジ に向って 、 旦那 、 スミマセンガ 、 モウ 一 杯 ナントカ 、 と 頼ん で いる の は オ客 の 方 で 、 ダメ だ よ 、 ウルセエ ナ 、 と 言っ て いる の は オヤジ の 方 な の で ある 。
 108誰 が 言葉 を 変えよ と 命令 し た わけ で も ない 。
 109一 朝 生活 が 変る や 、 瞬時 に し て 言葉 は 変っ て いる の で ある 。
 110奇怪 な 敬語 や 何 やら 横行 し 、 日本 の 言葉 が 民主的 で ない と 云う なら 、 日本人 の 生活 が まだ 民主的 で ない という シルシ に すぎ ない もの だ 。
 111敬語廃止運動 が 起る とすれば 、 新生活 とか 生活改善運動 の 一部 として 行わ れる 以外 に 意味 は ない 。
 112全日本人 の 言葉 を 法則 を 定め て 統一 し よう と する の は ムリ で ある が 、 ある キッカケ を 与え て 自然 の 変化 を うながし 待つ こと は 不自然 で は ない 。
 113先ず 、 新聞 を ひらい て み たまえ 。
 114ある 人 を 氏 と よび 、 さん と よび 、 君 と よび 、 犯罪者 は よびすて ゞ は ない か 。
 115個人 が 勝手 に 用い て いる ザアマス だの 敬語 など は 、 銘々 勝手 で 、 罪 の ない もの で ある が 、 こうして 一 つ の 新聞的表現 を 法則化 し て 押しつけ て くる 新聞語 など は 、 もっと 厳しく 批判 する 必要 が ある 。
 116オエラ方 も 犯罪者 も 戦犯 も 、 みんな 一様 に 氏 と よん だら 、 どう だ 。
 117新聞 の 任務 が 純粋 に 報道 に とゞまる だけ なら ともかく 、 多少とも 啓蒙的役割 を 帯び 、 又 、 それ を 自覚 し て いる とすれば 、 自分 の 在り方 に 、 もっと 自覚的 で なけれ ば なら ぬ 。
 118そして 新聞用語 という もの に対して も 、 組織的 な 研究機関 が あっ て 、 その 選定 に 深い 考慮 を 払い 、 又 、 世間 の 批判 に 耳 を 傾け て 善処 す べき であろう と 思う 。
 119そういう 改善 の キッカケ と なる 力 は 、 文部省 の 教科書 など より 、 はるか に 新聞 の 方 が 強力 だ 。
 120それ も 、 つまり 、 言葉 自体 の 問題 で は なく 、 文部省 は 我々 の 生活 の 中 に は 参加 し ない が 、 新聞 は 、 直接 我々 の 血肉 と つながる 生活 の 一部 で ある から で ある 。