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aozora_Yuki-2-2000のコンテキスト表示

title The selfish giant (Wagamama na oootoko)
author Wilde, Oscar -- Yuki, Hiroshi (trans.)
date 2000
source Aozora Bunko (http://www.aozora.gr.jp/cards/000332/card2233.html)
genre fiction
subcorpus Aozora Bunko
terms of use Creative Commons license


 1子どもたち は 毎日 、 午後 に なっ て 学校 から 帰っ て くる と 、 大男 の 庭 に 行っ て 遊ぶ の が 常 でし た 。
 2そこ は 、 柔らかい 緑 の 草 が 生え た 、 広く て 素敵 な 庭 でし た 。
 3草むら の あちこち に は 、 星 に 似 た 美しい 花 が 立っ て おり まし た 。
 4その 庭 に は 十二 本 の 桃 の 木 が あり 、 春 に なる と 薄桃色 と 真珠色 の 繊細 な 花 が あふれる よう に 咲き 、 秋 に は 豊か な 果実 が 実り ます 。
 5鳥たち は 木々 の 上 で たいそう 甘い 歌声 を 響かせる ので 、 子どもたち は 遊ぶ の を やめ て 聞きいる の でし た 。
 6「 ここ で 遊ぶ の は なんて 楽しい ん だろう ! 」 と 、 くちぐちに 声 を あげ まし た 。
 7ある 日 、 大男 が 帰っ て き まし た 。
 8彼 は コーンウォール に 住む 鬼 の 友人 を 訪問 し 、 そこ で 7 年間 いっしょ に 過ごし て い まし た 。
 97 年 が 過ぎ 、 話し たい こと は 全部 話し た し 、 もう 話題 も なくなっ て き た ので 、 自分 の 城 に 帰ろ う と 思っ た の でし た 。
 10大男 が 戻る と 、 子どもたち が 庭 で 遊ん で いる の が 見え まし た 。
 11「 おまえたち 、 ここ で 何 を し て いる ? 」
 12大男 が 大きな どら声 で 叫ん だ ので 、 子どもたち は 逃げ て いき まし た 。
 13「 わし の 庭 は わし の 庭 だ 」 と 大男 は いい まし た 。
 14「 誰 だって そんな こと は わかる 。
 15この 庭 で は わし の 他 、 誰 に も 遊ば せ ん ぞ 」
 16それで 、 大男 は 庭 の まわり に 高い 壁 を めぐらせ 、 立て札 を 立て まし た 。
 17立ち入る 者 に は 罰 を 与える
 18大男 は とても わがまま だっ た の です 。
 19かわいそう な こと に 、 子どもたち に は 遊ぶ ところ が なくなっ て しまい まし た 。
 20道路 で 遊ぼ う と し て み まし た が 、 道路 は とても ごみごみ し て い て 、 かたい 石ころ が いっぱい あっ て 、 好き に なれ ませ ん でし た 。
 21学校 が 終わる と 、 子どもたち は 高い 壁 の まわり を うろうろ し て 、 中 の 美しい 庭 の こと を 話し 合い まし た 。
 22「 あそこ で 遊ぶ の は なんて 楽しかっ た ん だろう ! 」 と 、 くちぐちに 言い まし た 。
 23やがて 春 が 来 まし た 。
 24国中 に 小さな 花 が 咲き 、 小鳥たち が あふれ まし た 。
 25わがまま な 大男 の 庭 だけ が 、 まだ 冬 でし た 。
 26子どもたち が い なかっ た ので 、 鳥たち は 歌い たい と 思い ませ ん でし た し 、 木々 は 花 を 咲かせる の を 忘れ て おり まし た 。
 27ある とき 、 美しい 花 が 一 輪 、 草むら から 頭 を もたげ まし た が 、 立て札 を 見 て 、 子どもたち が かわいそう に なり 、 地面 の 中 に また もぐりこん で 、 眠っ て しまい まし た 。
 28喜ん だ の は 雪 と 霜 だけ でし た 。
 29「 春 は この 庭 の こと を 忘れ ちまっ た ん だ 」 と 二 人 は 声 を あげ まし た 。
 30「 だから 一年中 ここ に 住も う ぜ 」
 31雪 は 大きな 白い 外套 で 草 を 覆い 、 霜 は 木々 を すっかり 銀色 に 塗りつぶし まし た 。
 32それから 二 人 が 北風 に いっしょ に 住も う と 言っ た ので 、 北風 が やってき まし た 。
 33彼 は 毛皮 を まとい 、 庭 で 一日中 吠えたけり 、 煙突 の 煙出し を 吹き飛ばし まし た 。
 34「 ここ は 居心地 が よい 場所 だ 」
 35彼 は 言い まし た 。
 36「 霰 に も 来る よう に 言わ なく ちゃ な 」
 37そして 霰 も やってき まし た 。
 38毎日 三 時間 、 霰 は 城 の 屋根 を がたがた いわせ 、 とうとう 屋根 を ふい た スレート を ほとんど 壊し て しまい まし た 。
 39それから 霰 は 出来る 限り の 速さ で 庭 の まわり を ぐるぐる 走りまわり まし た 。
 40霰 は 灰色 の 服 で 、 吐く 息 は 氷 の よう でし た 。
 41「 どうして 春 が 来る の が こんな に 遅い の だ 」 と 、 窓際 に 座り 、 白く 冷たい 庭 を 見 ながら 、 わがまま な 大男 は 言い まし た 。
 42「 天気 が 変わっ て ほしい もの だ 」
 43しかし 春 は まったく やって来 ませ ん でし た 。
 44夏 も 来 ませ ん 。
 45秋 が 来る と 、 どこ の 庭 に も 黄金 の 果実 が 実り まし た が 、 大男 の 庭 で は まったく 実り が あり ませ ん でし た 。
 46「 この 大男 は わがまま すぎる ん です もの 」 と 秋 は 言い まし た 。
 47ですから この 庭 は いつ でも 冬 で 、 北風 と 、 霰 と 、 霜 と 、 雪 が 木々 の 間 で 舞い踊っ て おり まし た 。
 48ある 朝 、 大男 が ベッド で 目 を 覚ます と 、 美しい 音楽 が 聞こえ て き まし た 。
 49それ は あまり に も 耳 に 甘い 響き でし た ので 、 これ は 王宮 の 楽団 が 通りかかっ た の に 違いない と 大男 は 思い まし た 。
 50実は 小さな ベニヒワ が 窓 の 外 で 歌っ て い た だけ な の です が 、 庭 で 鳥 が さえずる の を 大男 が 耳 に し なく なっ て から あまり に も 長い 時間 が 過ぎ た ので 、 大男 の 耳 に は 鳥 の 声 が 世界 で 最も 美しい 音楽 の よう に 聞こえ た の です 。
 51やがて 、 霰 は 頭上 で 踊る の を やめ 、 北風 も 吠える の を やめ まし た 、 そして 、 開い た 窓 から かぐわしい 香り が 大男 の 方 に やってき まし た 。
 52「 やっと 春 が 来 た の に 違いない 」 と 大男 は 言い まし た 。
 53そして ベッド から 飛び起き て 外 を 見 まし た 。
 54何 が 見え た でしょう か 。
 55最高 に 素晴らしい 眺め でし た 。
 56子どもたち が 、 壁 の 小さな 穴 を 通りぬけ て 入り込み 、 木 の 枝 の 上 に 座っ て いる の でし た 。
 57それぞれ の 木 に 小さな 子ども が 乗っ て いる の が 見え まし た 。
 58木々 は 子どもたち が 戻っ て き た ので 大喜び で 、 自分 の 体 を 覆い 尽くす ほど 花 を 咲かせ 、 子どもたち の 頭 の 上 で やさしく 腕 を 振っ て おり まし た 。
 59鳥たち は 飛び交い 、 喜び に さえずり 、 花 は 緑 の 草むら から 頭 を 出し て 笑っ て おり まし た 。
 60それ は うるわしい 情景 でし た 。
 61ただ 一 箇所 だけ が まだ 冬 でし た 。
 62それ は 庭 の 一番 向こう の 角 で 、 そこ に 小さな 男の子 が 立っ て い まし た 。
 63その 子 は とても 小さく 、 木 の 枝 まで 届き ませ ん 。
 64ひどく 泣き ながら 、 木 の まわり を ぐるぐる と 回っ て い ます 。
 65かわいそう な 木 は 、 まだ 霜 と 雪 で すっかり 覆わ れ 、 北風 は その 上 を 吹き荒れ て おり まし た 。
 66「 のぼっ て ! ぼうや 」 と その 木 は 言い 、 枝 を できるだけ 曲げ て 下ろし まし た 。
 67でも 、 その 子 は 背 が 低く て どう し て も 届か ない の です 。
 68外 を 見 て いる うち に 大男 の 心 は 雪 が 解ける よう に 和らぎ まし た 。
 69「 わし は なんて わがまま だっ た ん だ ! 」 と 大男 は 言い まし た 。
 70「 春 が なぜ ここ に 来 よう と し ない の か 、 その わけ が 今 わかっ た 。
 71あの かわいそう な 小さな 男の子 を 木 の 上 に 上げ よう 、
 72そして 壁 を たたきこわそ う 。
 73そう すれ ば わし の 庭 は 永遠 に 子どもたち の 遊び場所 に なる だろう 」
 74大男 は 自分 の し て き た こと を 本当 に 後悔 し た の です 。
 75そこで 大男 は そっと 階段 を 降り 、 静か に 正面 の 扉 を 開け 、 庭 に 入り まし た 。
 76しかし 大男 を 見る と 、 子どもたち は 恐く なっ て 走っ て 逃げ て しまい 、 庭 は また 冬 に 戻っ て しまい まし た 。
 77小さな 男の子 だけ が 走り ませ ん でし た 。
 78目 に 涙 が いっぱい で 、 大男 が 来る の が 見え なかっ た から です 。
 79大男 は 忍び足 で その 子 の 後ろ に まわり 、 抱き上げる と 木 に 乗せ て あげ まし た 。
 80すると 、 木 に は いっぺん に 花 が 咲き乱れ 、 鳥 が やってき て 歌 を 歌い まし た 。
 81小さな 男の子 は 、 伸ばし た 両腕 を 大男 の 首 に まわし 、 キス し まし た 。
 82他 の 子どもたち も 、 大男 が もう 意地悪 で は ない と わかり 、 走っ て 戻っ て き まし た 。
 83子どもたち とともに 春 も 戻っ て き まし た 。
 84「 この 庭 は 、 もう おまえたち の もの だ よ 、 かわいい 子どもたち 」 と 大男 は 言い 、 大きな 斧 を 取る と 、 壁 を たたきこわし まし た 。
 85人々 が 十二 時 に 市場 に 行く とき 、 これ まで 誰 も 見 た こと も ない ほど 美しい 庭 で 、 大男 が 子どもたち と いっしょ に 遊ん で いる の が 見え まし た 。
 86一日じゅう 子どもたち は 遊び 、 夕方 に なる と みんな は 大男 の ところ に さようなら を 言い に やってき まし た 。
 87「 でも 、 あの 小さな お友達 は どこ に いる ん だい 」 と 大男 は 尋ね まし た 。
 88「 わし が 木 に 乗せ て やっ た 子 は ? 」
 89キス を し て くれ た から 、 大男 は あの 子 が 一番 好き だっ た の です 。
 90「 知ら ない よ 」 と 子どもたち は 答え まし た 。
 91「 い なく なっ ちゃっ た ん だ 」
 92「 明日 、 絶対 ここ に くる よう に 言っ て くれ ない か 」 と 大男 は 言い まし た 。
 93しかし 子どもたち は 、 その 子 が どこ に 住ん で いる の か 知ら ない し 、 これ まで 一 度 も 会っ た こと が ない ん だ 、 と 言い まし た 。
 94それで 大男 は とても 悲しい 気持ち に なり まし た 。
 95毎日 、 午後 に なっ て 学校 が 終わる と 、 子どもたち は やってき て 大男 と 遊び まし た 。
 96でも 、 大男 が 一番 好き だっ た 小さな 男の子 は 二 度 と 現れ ませ ん でし た 。
 97大男 は 子どもたち みんな に とても 親切 でし た 。
 98しかし 、 大男 は 自分 の 初めて の 小さな 友 に とても 会い たい と 思い 、 あの 子 の こと を たびたび 口 に し て い まし た 。
 99「 あの 子 に 会い たい もの だ ! 」 と 大男 は よく 言っ て おり まし た 。
 100何 年 も たち 、 大男 は たいへん 年老い 、 体 も 弱く なり まし た 。
 101もう 遊ぶ こと は でき ませ ん でし た から 、 大きな 肱掛椅子 に 座り 、 子どもたち が 遊ん で いる の を 見 、 庭 を 楽しん で おり まし た 。
 102「 ここ に は 美しい 花 が たくさん 咲い て いる 」
 103大男 は 言い まし た 。
 104「 しかし 、 子どもたち が 何より も 美しい 花 だ 」
 105ある 冬 の 朝 、 大男 は 服 を 着 ながら 窓 の 外 を 見 まし た 。
 106いま で は 大男 は 冬 を 憎ん で は い ませ ん でし た 。
 107春 は 眠っ て おり 、 花 は 休ん で いる だけ だ 、 と わかっ た から です 。
 108突然 、 大男 は 驚い て 目 を こすり 、 何 度 も 何 度 も 見なおし まし た 。
 109それ は まこと に 素晴らしい 眺め でし た 。
 110庭 の 一番 向こう の 角 に 、 愛らしく 白い 花 で すっかり 包ま れ た 木 が 一 本 あり まし た 。
 111枝 は すべて 黄金 で 、 銀色 の 果実 が 垂れ 、 その 下 に 、 大男 が 愛し て い た 小さな 男の子 が 立っ て い た の です 。
 112大きな 喜び に 包ま れ 、 大男 は 階段 を 駆け降り 、 庭 へ 飛び出し まし た 。
 113草むら を 走り抜け 、 その 子 の そば へ やって来 まし た 。
 114すぐ 近く まで 来る と 、 大男 は 怒り で 顔 を 赤く し て 言い まし た 。
 115「 いったい 、 誰 が そなた に 傷 を 負わせ た の だ ? 」
 116というのは 、 その 子 の 両方 の 手のひら に は 釘 の 跡 が あり 、 小さな 両足 に も 釘 の 跡 が あっ た から です 。
 117「 いったい 、 誰 が そなた に 傷 を 負わせ た の だ ? 」 と 大男 は 叫び まし た 。
 118「 教え て くれ 。
 119わし は 大剣 で そいつ を 殺し て やる から 」
 120「 そう で は ない ! 」
 121その 子 は 答え まし た 。
 122「 これ は 愛 の 傷 な の だ よ 」
 123「 あなた は どなた です か ? 」
 124大男 は 言い まし た 。
 125すると 大男 は 、 不思議 な 畏怖 の 念 に 襲わ れ 、 その 小さな 子 の 前 に ひざまずき まし た 。
 126その 子 は 大男 に 微笑みかけ 、 こう 言い まし た 。
 127「 かつて 、 あなた は 、 この 庭 で 私 を 遊ばせ て くれ た 。
 128今日 は 、 あなた が 、 わたし の 庭 へ いっしょ に 来る の だ 。
 129わたし の 庭 、 パラダイス へ 」
 130その 日 の 午後 、 子どもたち が 走っ て くる と 、 大男 は 木 の 下 に 体 を 横たえ て 死ん で おり 、 なきがら は 白い 花 に すっかり 覆わ れ て おり まし た 。