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Context for fiction_DICK-1952

title translation of "The Gun" by Philip K. Dick
date 2017
genre fiction
source title The Gun
source author Philip K. Dick
source date 1952
source Planet Stories September 1952 edition; Project Gutenberg, June 15, 2009. Produced by Greg Weeks, Stephen Blundell and the Online Distributed Proofreading Team (http://www.gutenberg.org/ebooks/29132)
terms of use Creative Commons license


 1大砲
 2フィリップ・K・ディック 著
 3何一つ 動か ず 、 ぴくりと する もの も なかっ た 。
 4すべて が 静か で 、 死ん で い た 。
 5大砲 だけ が 生命 の 兆し を 現わし て い た 、、、
 6そして 侵入者たち は 常に それ を 破壊 し た 。
 7お宝 を 回収 する ため の 復路 は 、 朝飯前 だ と 、 彼ら は 微笑ん だ 。
 8キャプテン は 望遠鏡 の レンズ を 覗き込ん だ 。
 9彼 は 焦点 を 素早く 調整 し た 。
 10「 我々 が 見 た の は 原子核分裂 だっ た の だ な 、 わかっ た よ 。 」 と やがて 彼 は 言っ た 。
 11キャプテン は ため息 を つき 、 レンズ を 押し遣っ た 。
 12「 見 たい 人 は どうぞ 、
 13あまり いい 眺め で は ない が ね 。 」
 14「 私 に も 」 と 、 考古学者 の テンス は 言っ た 。
 15彼 は 屈み 目 を 細め て レンズ を 覗い た 。
 16「 あぁ なんて こと だ ! 」
 17彼 は 激しく 飛退き 、 後ろ に い た チーフナビゲーター の ドール を 突き飛ばし て しまっ た 。
 18「 どうして 我々 は 、 わざわざ ここ まで やって来 た ん だ よ ? 」
 19ドール は 仲間 を 見回し て 尋ね た 。
 20「 着陸 し て も 意味 が ない 。
 21すぐ に 戻ろ う 。 」
 22「 多分 、 彼 は 正しい 」 と 生物学者 は そっと つぶやい た 。
 23「 だが 、 自分 の 目 で 確認 さ せ て もらい たい の だ が 、 いい かね 」
 24彼 は テンス を 押しのけ て 、 覗き込ん だ 。
 25彼 は 、 茫漠 と し て 、 惑星 の 端 まで 、 どこ まで も 続く 灰色 の 地表 を 見 た 。
 26最初 、 彼 は それ が 水 だ と 思っ た が 、 すぐ 彼 に は それ が 、 突き出 た 岩 の 小山 によって 周期的 に 砕か れ た でこぼこ な 溶解鉱滓 だ と 解かっ た
 27ぴくりと 動く もの でさえ 何 も なかっ た 。
 28全て は 静寂 で 、 死ん だ よう で あっ た 。
 29「 なるほど 」 と 、 生物学者 の フォーマー は レンズ から 離れ ながら 言っ た 。
 30「 まあ 、 あそこ で は 、 豆 一 粒 も 見つかり っこない 。 」
 31彼 は 笑お う と し た が 、 唇 は 動か ない まま だっ た 。
 32彼 は 少し 離れ て 、 一人 立ち 、 仲間 の 向こう先 を 見つめ て い た 。
 33「 大気中 の サンプル は 何 を 示す だろう 」 と テンス が 言っ た 。
 34「 私 が 推測 する に 」
 35キャプテン は 答え た 。
 36「 大気 の ほとんど は 毒さ れ て いる 。
 37だが 、 我々 は 、 これ を すべて 予想 し て い なかっ た って ?
 38だから 、 なぜ そんな に 驚い て いる の か わから ない よ 。
 39我々 の システム と 同様 に はるか 昔 の 核分裂 は 、 恐ろしい こと に 違いない 。 」
 40キャプテン は 、 威厳 は ある が 無表情 な 様子 で 、 廊下 を 大股 で 歩い て 行っ た 。
 41彼ら は キャプテン が コントロールルーム に 消え て いく の を 見送っ た 。
 42キャプテン が ドア を 閉める と 、 若い 女性 が 振り向い て 言っ た 。
 43「 望遠鏡 が 見せ た の は 、 良い こと ?
 44悪い こと な の かしら ? 」
 45「 悪い こと だろう ね 。
 46恐らく 、 生命体 は 存在 し ない だろう から 。
 47大気 も 汚染 さ れ 、 水 は 気化 し 、 土壌 は すべて 熱 で 熔解 し て いる 。 」
 48「 彼ら は 、 地下 に 身 を 隠し た の だろう ね ? 」
 49キャプテン は 、 船窓 を ずらし た 、
 50すると 船下 の 惑星 の 地表 が 見え た 。
 51彼ら の 内 の 二人 が 、 じっと 見下ろし た が 、 声 も 出 ず 、 動揺 し た 。
 52破壊 さ れ て い ない まま の 廃墟 が 何 マイル も 何 マイル も 続き 、 黒い 溶岩 、 でこぼこ と し た 穴 、 えぐれ た 細長い 溝 、 そして ところどころ に 岩山 が ある 。
 53突然 、 ナシャ が 飛び上がっ て 言っ た 。
 54「 見 て !
 55あそこ 、 あの 端 !
 56見える ? 」
 57彼ら は 見つめ た 。
 58何 か が 起き上がっ た 、
 59岩 で は ない 、
 60偶然 出来 た 形成 の もの で も ない 。
 61それ は 丸く 、 点 が 集まっ て 丸い 形 と なっ た 、 惑星 の 死ん だ 肌 の 上 に ある 白い 小さな 球状 の もの だっ た 。
 62都市 か ?
 63何 か の 建造物 か ?
 64「 船 の 向き を 変え て 」 と ナシャ が 興奮 し て 言っ た 。
 65彼女 は 顔 から 黒髪 を 掻き上げ た 。
 66「 船 の 向き を 変え て 、 あれ が 何 か を 確かめ ましょ う ! 」
 67船 は 向き を 変え 、 コース を 変更 し た 。
 68船 が 白い 点 の 集まり に 近づく と 、 キャプテン は 船 を 、 低く 、 思い切り 低く 飛行 さ せ た 。
 69「 桟橋 だ 。 」 と 彼 は 言っ た 。
 70「 石 か 何 か の 桟橋 だ 。
 71おそらく 人工石 を 注い だ もの だろう 。
 72都市 の 残骸 だろう 。 」
 73「 なんて こと 。 」
 74ナシャ は 呟い た 。
 75「 なんて 恐ろしい こと ! 」
 76彼女 は その 廃墟 が 視線 から 消える まで 見つめ て い た 。
 77半円形上 の ところ に 、 白い 四角 の 形 を し た もの が 溶岩 から 突き出 て 、 亀裂 が 入り 、 まるで 欠け た 歯 の よう に 見え た 。
 78「 生き て いる もの は 何 も ない 。 」 と ついに キャプテン は 言っ た 。
 79「 すぐ に 帰還 し よう 。
 80ほとんど の 乗組員 も そう 望ん で いる はず だ 。
 81政府受信局 に 連絡 し 、 我々 が 発見 し た もの を 伝え て おくれ 、
 82我々 が ----」
 83キャプテン は よろめい た 。
 84原子爆弾 の 破裂弾 の 一 発 が 船 を 打撃 し 、 その 衝撃 で 船 は 回転 し た 。
 85キャプテン は 床 に 倒れ 、 その 拍子 に コントロールテーブル に 激突 し た 。
 86テーブル の 上 に あっ た 書類 や 器具 など が 彼 の 上 に 降っ て き た 。
 87彼 が 立ち上がり 、 歩き 始め た 時 、 二 度目 の 攻撃 が き た 。
 88天井 が 割れ て 開き 、 支柱 や 梁 が ねじれ て 、 折れ た 。
 89船 は がたがた と 激しく 揺れ 、 急下降 し 、 その 後 自動操縦制御 に かわり 、 軌道修正 を し た 。
 90キャプテン は 壊れ た 制御盤 の そば の 床 に 横たわっ た 。
 91部屋 の 隅 で は 、 ナシャ が 破片 の 間 から 身体 を 抜く の に もがい て い た 。
 92外 で は 男たち が すでに 、 船内 の 隙間 から の 漏れ を 防ぐ 作業 を し て い た 。
 93その 隙間 から 、 貴重 な 空気 が 激しく 流れ出 て 、 空中 に 消散 し て い た 。
 94「 助け て ! 」
 95ドール は 叫ん で い た 。
 96「 火 が ここ まで 来 て 、 配線 に 火 が 点い て しまっ た 」
 972人 の 男達 が 走っ て き た 。
 98テンス は 何 も 出来 ずに 見 て いる だけ だっ た 、
 99というのも 彼 の 眼鏡 は 壊れ て 曲がっ て い た から だ 。
 100「 ここ に 命 が ある から 」
 101彼 は 半分 は 自分 に向かって 言っ た 。
 102「 しかし 、 一体 どう すれ ば ---- 」
 103「 手 を 貸し て 」
 104フォーマー は 、 急い で 通り過ぎ ながら 言っ た 。
 105「 手 を 貸し て 、
 106私たち は 船 を 着陸 さ せ なけれ ば なら ない の だ よ 。 」
 107夜 で あっ た 。
 108わずか な 星 が 頭上 に 輝き 、 惑星 の 地表 から 吹き上げ られ て 浮遊 し て いる 泥土 の 間 で きらめい て い た 。
 109ドール は 顔 を しかめ て 、 じっと 見上げ て い た 。
 110「 なんて 場所 に とらわれ て しまっ た ん だろう ! 」
 111彼 は 再び 仕事 に 取り掛かり 、 屈曲 し て しまっ た 金属製 の 船体部分 を もと に 戻す ため 、 ハンマー で 打ちつけ た 。
 112彼 は プレッシャースーツ を 着 て い た 。
 113いまだ 多く の 小さな 漏れ が あり 、 大気 から 放出 さ れ た 放射性粒子 は すでに 船内 に 流れ込ん で い た 。
 114ナシャ と フォーマー は コントロールルーム の テーブル に 座っ て 、 顔色 は 青白く 神妙 な 面持ち で 、 在庫リスト を 調べ て い た 。
 115「 炭水化物 が 少ない な 」 と フォーマー は 言っ た 。
 116「 貯蔵 し て いる 脂肪 を 何 か に する こと が できる だろう けど 、 」
 117「 外 で 何 か を 見つける こと が できる かしら 。 」
 118ナシャ は 窓 の 方 に 行っ た 。
 119「 なんて 嫌 な 眺め な ん でしょう ! 」
 120彼女 は そわそわ と 行っ たり 来 たり し た 。
 121彼女 は 細身 で 小柄 で あっ た が 、 疲労 で 顔色 が 悪かっ た 。
 122「 調査グループ は 何 を 見つける と 思う ? 」
 123フォーマー は 肩 を すくめ た 。
 124「 あまり 見つけ られ ない と 思う 。
 125たぶん 、 あちこち の 亀裂 で 成長 し て いる ほんの 少し の 雑草 程度 じゃ ない かな 。
 126利用 でき そう な もの は 何 も ない と 思う 。
 127この 環境 に 適応 する もの は どれ も 毒性 が ある か 、 死 に 至る よう な もの ばかり よ 。 」
 128ナシャ は 作業 の 手 を 止め て 、 彼女 の 頬 を こすっ た 。
 129そこ に は 深い 傷 が あり 、 まだ 赤く 腫れ て い た 。
 130「 それなら どう 説明 する の ?
 131君 の 理論 によれば 、 住人 は まるで 芋 を 揚げる よう に 、 皮膚 を 焼き揚げ られ て 死ん で いっ た に 違いない 。
 132じゃ 一体 誰 が 我々 を 射撃 し た の ?
 133誰 か が 我々 の 存在 を 感知 し 、 決断 を 下し 、 砲撃 を 向け た の だ 。 」
 134「 そして 射程距離 を 測定 し た 。 」 と キャプテン は 、 部屋 の 隅 の ベッド から 弱々しく 言っ た 。
 135キャプテン は 彼ら の 方 に 向い た 。
 136「 我々 を 悩まし て いる の は そこ な ん た 。
 137第一 砲弾 は 、 我々 の 任務遂行 を 妨げ 、 二 回目 の 砲弾 は 、 我々 を 、 ほぼ 破壊 し た 。
 138彼ら は 狙い を うまく 、 そして 完全 に 定め た 。
 139私たち は それ ほど 簡単 な ターゲット で は ない 。 」
 140「 その 通り です 。 」
 141フォーマー が うなずい た 。
 142「 まあ 、 我々 が ここ を 出る 前 に は 、 答え が わかる だろう 。
 143なんて 奇妙 な 状況 な の だろう !
 144我々 の 総推論 は 、 生命 は 存在 せ ず 、 惑星 全体 は 燃え果て 、 大気 そのもの も なくなり 、 完全 に 毒 に 侵さ れ た 状態 で ある という こと だ 。 」
 145「 弾丸 を 発射 し た 大砲 は 生き残っ た のに 、 なぜ 人 は い ない の ? 」 と ナシャ は 言っ た 。
 146「 人間 と 大砲 は 同じ で は ない よ 。
 147金属 は 、 呼吸 する ため に 空気 を 必要 と し ない 。
 148金属 は 、 放射性粒子 から 白血病 を 起こさ ない し 。
 149金属 は 、 食べ物 も 水 も 必要 と し ない よ 。 」
 150沈黙 が あっ た 。
 151「 パラドックス 。 」
 152ナシャ は 言っ た 。
 153「 とにかく 、 午前中 に 、 調査グループ を 送る べき だ と 思う わ 。
 154そして 一方 、 帰還 できる よう に 船 の 修理 も 継続 する 必要 も ある と 思う の 。 」
 155「 離陸 する まで に は 数 日 かかる だろう な 」 と フォーマー は 言っ た 。
 156「 全員 を ここ で 働か せ て おく べき だ よ 。
 157調査グループ を 送る 余裕 は ない 。 」
 158ナシャ は 少し 微笑ん だ 。
 159「 最初 の グループ で あなた を 送り出す わ 。
 160おそらく 、 あなた は 発見 する こと が できる でしょう ―
 161えっと 、 あなた が 、 興味 が ある の は 何 だっ た かしら ? 」
 162「 マメ科植物 。
 163食用豆類 。 」
 164「 多分 、 あなた は 食用豆類 を いく つ か 見つける こと が できる わ よ 。
 165ただ ー 」
 166「 ただ 何 ? 」
 167「 ただ 気を付け て !
 168彼ら は 私たち が 誰 な の か 、 また なぜ 私たち が ここ に 来 た の か も 知る こと も なく 、 一 度 は 私たち に 発砲 し た の だ から 。
 169彼ら は 互い に 戦い 合っ た と 思う ?
 170おそらく 彼ら は どんな 状況下 で も 、 自分 以外 の もの が 友好的 で ある と 想像 する こと は 出来 なかっ た の よ 。
 171なんて 奇妙 な 進化 の 特性 な ん でしょう !
 172種間 で の 争い 。
 173同族内 で の 戦い ! 」
 174「 朝 に なれ ば わかる だろう 。 少し 眠ろ う 」 と フォーマー が 言っ た 。
 175太陽 が 昇っ た 、
 176寒く て 、 平穏 な 朝 だっ た 。
 1773 人 の 人間 、 二人 の 男性 と 一人 の 女性 が ポート から 出 て 、 堅い 地面 に 飛び降り た 。
 178「 なんて 日 な ん だ ! 」
 179ドール は 不機嫌 に 言っ た 。
 180「 もう 一 度 堅い 地面 を 歩け れ ば 、 どんな に うれしい だろう と 言っ た けど 、 」
 181「 来 て 」
 182ナシャ は 言っ た 。
 183「 私 の そば に 来 て 。
 184ドール 、 あなた に 言い たい こと が ある の よ 、
 185ドール と 二人 で 話 を し て も いい ? テンス 」
 186テンス は むっつり と し て 頷い た 。
 187ドール は ナシャ に 追いつい た 。
 188彼ら は 並ん で 歩き 、 メタル製 の 靴 で 地面 を ざくざく と 踏み進ん で 行っ た 。
 189ナシャ は ドール を ちらりと 見 た 。
 190「 聞い て 。
 191キャプテン が 死に そう な の 。
 192この こと は 私たち の 2人 以外 は 誰 も 知ら ない の 。
 193この 惑星 の 一 日 が 終わる まで に 、 彼 は 死ん で しまう わ 。
 194ショック で 彼 の 心臓 が どうにか なっ て しまっ た の よ 。
 195キャプテン も 、 もう 60 歳 でしょう 。 」
 196ドール は 頷い た 。
 197「 最悪 だ ね 。
 198僕 は 彼 を 大いに 尊敬 し て いる 。
 199もちろん 君 は 彼 の あと 船長 に なる だろう 。
 200君 は 今 、 すでに 副キャプテン な ん だ から さ 。 」
 201「 だめ よ 。
 202私 以外 の 誰 か が キャプテン に なっ た 方 が いい わ 。
 203あなた か 、 フォーマー か 。
 204この 状況 を ずっと 考え て い た ん だ けど 、 私 は あなた達 と 同じ 立場 で ある べき だ と 思う の 。
 205あなた達 の どちら か は キャプテン に なり たい と 思っ て いる でしょう 、
 206それなら 私 は 責任 を 委ねる こと が できる 。 」
 207「 まあ 、 僕 は キャプテン に なり たく ない けど ね 。
 208フォーマー に さ せ て やっ て くれ 。 」
 209ナシャ は ドール を 観察 し た 、
 210彼 は 金髪 で 背 が 高く 、 プレッシャースーツ を 着 て 彼女 の そば を 大股 で 歩い て いる 。
 211「 私 は むしろ あなた を 気に入っ てる の 」 と 彼女 は 言っ た 。
 212「 少なくとも 、 一 度 は それ を 試し て み て も いい かもしれない 。
 213でも あなた の 好き な よう に し て 。
 214見 て !
 215僕たち は 何 か に 近づい てる よう だ よ 。 」
 216二人 は 、 テンス が 追いつく よう に 、 立ち止っ た 。
 217彼ら の 前 に は 、 廃墟 の 建造物 か の よう な もの が 現れ た 。
 218ドール は じっくり と 周り を 見渡し た 。
 219「 見える ?
 220この 場所 全体 は 自然 の 鉢 、 巨大 な 谷 の よう 。
 221岩 の 形態 の 様子 を 見 て !
 222岩 は すべて の 側 で 鋭く 立ち上がり 、 谷底 を 守っ て いる よ 。
 223多分 、 ここ は 何 発 か の 爆発 から 免れ た かもしれない 。 」
 224彼ら は 廃墟 を 歩き回り 、 小石 や 欠片 を 拾い集め た 。
 225「 ここ は 農場 だっ た ん じゃ ない かな 。 」
 226テンス が 木片 を 調べ ながら 言っ た 。
 227「 この 木片 は 風車小屋 の 一部 だっ た もの だ 。 」
 228「 本当 ? 」
 229ナシャ は 棒状 の 木片 を 取り 、 裏返し て 調べ た 。
 230「 興味深い わ 。
 231でも もう ここ を 出 ましょ う !
 232時間 が ない わ ! 」
 233「 ほら 、 」
 234ドール が 突然 指差し て 言っ た 。
 235「 あそこ の 、 ずっと 先 の 方 、 何 か ある だろう ? 」
 236ナシャ は 息 を のん だ 。
 237「 白い 石 」
 238「 えっ 何 ? 」
 239ナシャ は ドール を 見上げ た 。
 240「 白い 石 は 、 砕か れ た 巨大 な 歯 よ 。
 241キャプテン と 私 は コントロールルーム から 見 た わ 。 」
 242ナシャ は ドール の 腕 に 優しく 触れ た 。
 243「 あそこ から やつら が 撃っ て き た の よ 。
 244私たち が あの 近く に 着陸 し た と は 思わ なかっ た 。 」
 245「 なに か あっ た ? 」
 246テンス が やってき た 。
 247「 めがね が ない と ほとんど 何 も 見え ない ん だ よ 。
 248何 が 見える ん だ よ ? 」
 249「 都市 よ 。
 250あそこ から 攻撃 し て き た の よ 」
 251「 ああ ! 」
 252三 人 とも 並ん で 立っ て い た 。
 253「 さあ 、 もう 戻ろ う 。 」
 254テンス が 言っ た 。
 255あそこ で 発見 する もの なんて 何 も ない よ 。 」
 256ドール は テンス に しかめっ面 を し た 。
 257「 待っ て 。
 258我々 が 、 何 に 巻き込ま れ て いる の か 分から ない けれど 、 彼ら は 監視 し て いる に ちがいない 。
 259それに 彼ら は 、 おそらく もう すでに 私たち の 存在 に 気が付い て いる 。 」
 260「 やつら は おそらく 我々 の 船 自体 を 見 た だろう 」 と テンス は 言っ た 。
 261「 船 を どこ で 見つけ られる か 、 どこ で 吹き飛ばせる の か 、 おそらく 今 で は 把握 し て いる だろう 。
 262だから いまさら 、 彼ら に 近づこ う が 、 近づく まい が そんな こと に 違い が ある の か ? 」
 263「 確か に 。 」
 264ナシャ が 言っ た 。
 265「 もし 彼ら が 私たち を 捕え よう と し たら 、 私たち に は 逃げる チャンス は ない わ 。
 266私たち に は 軍事力 は 全く ない もの 。
 267そう でしょう 」
 268「 ハンドガン なら 持っ てる よ 」
 269ドール が 頷い た 。
 270「 じゃ 、 それなら 行こ う よ 。
 271テンス 、 君 が 正しい と 思う よ 、 」
 272「 でも 、 ここ に とどまろ う よ 。
 273ナシャ 、 きみ は 急ぎ すぎ だ よ 」
 274テンス は いらいら し ながら 言っ た 。
 275ナシャ は 振り向い た 。
 276彼女 は 笑っ た 。
 277「 夜 に なる 前 に あの 場所 に 着こ う と する なら 、 急い で 行か なくっ ちゃ 」
 278彼ら は 午後 の 中ごろ に 、 都市 の はずれ に 到着 し た 。
 279黄色い 太陽 は 冷たく 、 色 の ない 空 から 彼ら の 頭上 に 迫っ て い た 。
 280ドール は 市街 を 見渡せる 尾根 の 頂上 で 立ち止まっ た 。
 281「 ほら 、 そこ だ よ 。
 282何 が 残さ れ て いる の かな 。 」
 283そこ に ほとんど 何 も 残っ て い なかっ た 。
 284彼ら が 見 た 巨大 な コンクリート の 歩道橋 は 実は 歩道橋 で は なく 、 廃墟 と なっ た 建物 の 基盤部分 の 残骸 で あっ た 。
 285それら は 灼熱 で 焼か れ 、 真っ黒焦げ に なっ て ほとんど 地面 に つき そう な ほど 傾い て い た 。
 286白い 四角形 の 集合体 が 直径 約 4 キロ の 変形 し た 円 に なっ た もの 以外 何 も 残っ て い なかっ た 。
 287ドール が あきれ て 言い放っ た
 288「 これ 以上 は 時間 の 無駄 だ 。
 289死し て 骸骨化 し た 都市 、 それ だけ だ 。 」
 290「 しかし 、 攻撃 し て き た の は ここ から な ん だ よ 、
 291それ を 忘れ て は いけ ない よ 。 」
 292テンス が 小声 で 言っ た 。
 293「 とびぬけ た 視力 と 経験豊富 な 誰 か によって ね 。 」
 294ナシャ が 付け加え た 。
 295「 さあ 、 行き ましょ う ! 」
 296三 人 は 廃墟 と なっ た 都市 へ と 足 を 踏み入れ 、 残骸 と なっ た 建物 の 間 を 歩い た 。
 297三 人 とも 無言 で あっ た 。
 298彼ら は 黙々 と 歩き 、 自分たち の 足音 の 反響 する 音 だけ を 聞い て い た 。
 299「 気味 が 悪い な 。 」
 300ドール が 低い 声 で 言っ た 。
 301「 廃墟化 し た 都市 を み た こと は ある が 、 その 都市 は 長い 時 を 生き ぬい た 末 に 、 風化 し 死ん で いっ た もの だ 。
 302しかし これ は 殺戮 だ 、
 303焼か れ て 死ん で しまっ た の だ 。
 304この 都市 は 死ん だ の で は ない 、
 305殺さ れ た の だ 。 」
 306「 この 都市 の 名前 は なん と いう の かしら ? 」
 307ナシャ が 言っ た 。
 308ナシャ は 横 に 向き を 変え 、 建物 の 基盤 の 一部 で あっ た 階段 らしき 残骸 の 上 を 登っ て 行っ た 。
 309「 道案内版 を 見つける と 思う ?
 310金属版 か 何 か 。 」
 311ナシャ は 廃墟 を きょろきょろ と 探し回っ た 。
 312「 そこ に は 何 も ない よ 。 」
 313ドール が もどかしげ に 言っ た 。
 314「 こっち に 来い よ 。 」
 315「 待っ て 」
 316ナシャ が 屈ん で 、 コンクリート の 石 を 触っ た 。
 317「 ここ に 何 か 刻ん で ある わ 。 」
 318「 それ は なん だい ? 」
 319テンス が 急い で 促し た 。
 320彼 は ごみ や ほこり の 積もっ た 地面 に 座り込ん で 、 石 の 表面 の 上 に 手袋 を し た 手 を 走ら せ た 。
 321「 文字 だ よ 、 確か に 。 」
 322彼 は プレッシャースーツ の ポケット から ペン を 取り出し 、 紙 の はしきれ に その 文字 を 写し た 。
 323ドール が テンス の 肩越し に のぞい た 。
 324その 文字 は ― フランクリンアパートメント
 325「 それ は この 都市 の 名前 よ 」
 326ナシャ は 静か に 言っ た 。
 327テンス は その 紙 を ポケット に 仕舞い込み 、 三 人 は 先 に 進ん だ 。
 328「 ナシャ 、 君 は わかっ て いる ん だろう 、 我々 は 見張ら れ て いる ん じゃ ない か と 思う よ 。 でも 見回す な 。 」 と 少し 経っ て 、 ドール が 言っ た 。
 329ナシャ は 体 を 強張ら せ た 。
 330「 えっ ?
 331どうして そう 思う の ?
 332何 か 見 た の ? 」
 333「 見 て ない よ 、
 334でも 感じる ん だ よ 。
 335君 は 感じ ない かい ? 」
 336ナシャ は 少し 微笑ん だ 。
 337「 何 も 感じ ない わ 、
 338でも たぶん 私 は 、 あなた より 見つめ られる こと に なれ て いる の だ けど 。 」
 339ナシャ は 顔 を 少し 横 に 向け た 。
 340「 まあ ! 」
 341ドール が 携帯武器 に 手 を のばし て い た 。
 342「 何 ?
 343なに が 見える ? 」
 344テンス は わだち の 中 で 急 に 立ち止っ た 、
 345口 は あんぐり と 開い て い た 。
 346「 大砲 よ 、
 347あれ は 大砲 」
 348ナシャ が 言っ た 。
 349「 サイズ を 見 て 、
 350あの 大きさ を 」
 351ドール は ゆっくり と 携帯武器 を はずし た 。
 352「 そう だ 、
 353大砲 だ よ 。 」
 354大砲 は 巨大 だっ た 。
 355完全 な 状態 の 巨大 な 大砲 は 空 に 向き 、 鉄 と ガラス の 巨大 な 塊 として コンクリート の 石板 に 設置 さ れ て い た 。
 356彼ら が 見 た とき 、 旋回台 の 上 で 、 底 の 方 で ブーン という 音 を さ せ ながら 大砲 が 動い て い た 。
 357細い タービン が 風 で 回り 、 高い ポール の 先端 で ロッド が 枝状 に 張っ て い た 。
 358「 生き て いる わ 」
 359ナシャ が 囁い た 。
 360「 私たち の 話 を 聞い て 、 監視 し て いる の よ 」
 361大砲 は 再び 動き 、 今度 は 時計回り に 動い た 。
 362大砲 は 台 に はめ込ま れ て い た ので 、 その まま くるり と 一周 する こと が 出来 た 。
 363砲身 は 少し 下 を 向き 、 また 元 の 位置 に 戻っ た 。
 364「 でも 一体 誰 が 発射 する ん だ ? 」
 365テンス が 言っ た 。
 366ドール は 笑っ た 。
 367「 誰 も !
 368誰 も 発射 し ない よ 。 」
 369テンス と ナシャ は ドール を 凝視 し た 。
 370「 どういう 意味 ? 」
 371「 自分 で 発射 し てる ん だ よ 。 」
 372ふたり は ドール の 言っ て いる こと を 信じる こと が 出来 なかっ た 。
 373ナシャ が ドール に 近づき 、 眉 を ひそめ て 彼 を 見上げ た 。
 374「 理解 でき ない わ 、
 375どういう 意味 な の ?
 376自分 で 発射 し て いる って 」
 377「 見 て ごらん 、
 378証明 し て あげる よ 、
 379動か ない で ! 」
 380ドール は 地面 から 小石 を 拾い上げ た 。
 381彼 は ちょっと 躊躇 し た のち 小石 を 高く 宙 に 投げ上げ た 。
 382石 は 大砲 の 前 を 通り過ぎ た 。
 383途端 、 巨大 な 砲身 が 動い た 。
 384タービン が 収縮 し 、 小石 が 地面 に 落ち た 。
 385大砲 は 静止 し 、 再び 台 の 上 で 穏やか に 、 ゆっくり と 回転 し 始め た 。
 386「 ほら ね 」
 387ドール が 言っ た 。
 388「 僕 が 小石 を 投げ上げる と すぐ に 、 あいつ は それ に 気が付い た 。
 389地面 の 上 で 何 か が 飛び上がっ たり 、 動い たり する こと に対して の 警告 な ん だ よ 。
 390恐らく 我々 が 惑星 の 重力圏内 に 入る と すぐ に 、 あいつ は 我々 に 気づく の だ 。
 391あいつ は 最初 から 我々 に 照準 を 定め て い た ん だ よ 。
 392我々 に は チャンス は ない 。
 393あいつ は 我々 の 宇宙船 について すべて を 知っ て いる ん だ 。
 394我々 の 再離陸 を 待ちわび て いる ん だ よ 。 」
 395「 小石 に関して は 理解 出来 た わ 」
 396ナシャ が 頷き ながら 言っ た 。
 397「 大砲 は 小石 に は 気が付い た けれど 、 私たち に は 気が付い て なかっ た 、
 398だって 私たち は 地面 に 立っ て い た わ 、
 399地面 より 上 に い なかっ た もの 。
 400大砲 は 空中 に ある もの を 攻撃 する よう に 設計 さ れ て いる の よ 。
 401宇宙船 は 離陸 し ない 限り 安全 よ 。
 402すぐ に 決着 する わ 。 」
 403「 じゃ 一体 この 大砲 は 何 の ため に ある ん た よ ? 」
 404テンス が 口 を 挟ん だ 。
 405「 ここ に は 、 生き て いる もの は だれ も い ない よ 、
 406みんな 死ん で しまっ た ん だ 。 」
 407「 機械 が 生き て いる よ 。 」
 408ドール が 言っ た 。
 409「 そして 任務 を 遂行 する よう に 作ら れ た 機械 が 、 任務遂行中 さ 。
 410あいつ が どうやって 爆発 を 生き 抜い た か 僕 は 知ら ない が 。
 411あいつ は 作動 し 続け 、 敵 を 待っ て いる 。
 412恐らく 彼ら は ロケット か 何 か に 乗っ て やってき た ん だ 。 」
 413「 敵 」
 414ナシャ が 言っ た 。
 415「 彼ら 自身 の 民族 。
 416信じ 難い こと に 、 彼ら は 自分たち を 爆破 し 、 自分たち に向かって 狙撃 し た の よ 。 」
 417「 まぁ 、 それ も もう 終わり だ よ 、
 418ただし 我々 が 立っ て いる ここ 以外 の ところ で 、 だ が ね 。
 419この 大砲 は 今 も 警告 し て いる 。
 420殺す 用意 が 出来 て いる と 。
 421それ は 機能 し なく なる まで 続く だろう 。 」
 422「 その 時 まで に 私たち は 死ん で いる でしょう ね 。 」
 423ナシャ は 苦々しく 言っ た 。
 424「 この よう な 大砲 が 何百 も あっ た に 違いない 。 」
 425ドール は 囁い た 。
 426「 照準器 、 大砲 、 銃 、 ユニフォーム など の 見 慣れ た 風景 だっ た に 違いない 。
 427おそらく それ を 自然 な こと として 受け入れ て い た の だ よ 、
 428食べる こと や 寝る こと の よう な 生活 の 一部 として 。
 429教会 や 政府 の よう な 組織 。
 430男たち は 戦い の ため 、 軍 を 率いる ため に 訓練 し た 。
 431軍隊 は 一般的 な 職業 で 、 また 軍人 は 名誉 で あり 、 尊敬 も さ れる 。 」
 432テンス は 大砲 の 方 に ゆっくり と 歩み寄り 、 近視 の 目 を 凝らし て 大砲 を 見上げ た 。
 433「 かなり 複雑 だ ね 、 タービン と チューブ の 構造 は 。
 434これ は 望遠鏡 か 何 か の よう だ ね 。 」
 435テンス は 手袋 を はめ た 手 で 長い チューブ の 端 に 触れ た 。
 436途端 に 、 大砲 は 方向転換 し 、 砲身 は 後戻り し た 。
 437大砲 は 上下左右 に 動い た 。
 438「 動く な 」
 439ドール が 叫ん だ 。
 440砲身 は 彼ら が 立っ て いる ところ に 合わせ て 動き 、 彼ら は 硬直 し 、 その まま 動か なかっ た 。
 441恐ろしい 一瞬 、 大砲 は 彼ら の 頭上 で 躊躇 し 、 カチ と 音 を 立て 、 そして ブーン と うなり声 を あげ 、 位置 に つい た 。
 442その 時 音 は 消え 、 大砲 は 静か に なっ た 。
 443テンス は ヘルメット の 中 で 、 気 の 抜け た よう に 微笑ん だ 。
 444「 私 が レンズ の 上 に 指 を 置い た に 違いない 。
 445もっと 気を付ける よう に する よ 。 」
 446彼 は 円形 の 石板 に 上がっ て 、 大砲 本体 の 後ろ に 慎重 に 潜り込ん だ 。
 447テンス は 視界 から 消え た 。
 448「 テンス は どこ に 行っ た の ? 」
 449ナシャ が イライラ し て 言っ た 。
 450「 彼 は 私たち を 殺そ う と し てる ん だ わ 」
 451「 テンス 、 戻っ て こい ! 」
 452ドール が 叫ん だ 。
 453「 どう し た ん だ ? 」
 454「 ちょっと 待っ て 。 」
 455長い 沈黙 が あっ た 。
 456やっと 考古学者 は 姿 を 見せ た 。
 457「 私 は 何 か を 見つけ た よう だ 。
 458こっち に 来 て 、
 459お見せ し よう 」
 460「 なん だ よ ? 」
 461「 ドール 、 大砲 は 敵 から 守る ため に ここ に 配備 し て いる って 言っ た ね 。
 462彼ら が どうして 敵 を いれ たく ない の か その 理由 が 、 わかっ た と 思う 。 」
 463ドール と ナシャ は 訳 が 分から なかっ た 。
 464大砲 が 守っ て いる はず の もの を 、 私 は 見つけ た と 思う 。
 465一緒 に 来 て 、 手 を 貸し て くれ 。 」
 466「 了解 。 」
 467ドール は 不承不承 に 言っ た 。
 468「 行こ う 。 」
 469ドール は ナシャ の 手 を 握っ た 。
 470「 さぁ 、 テンス が 見つけ た もの が 何 か を 確かめ よう 。
 471これ と 似 た こと が 起こる かもしれない と 思っ た 、
 472大砲 が 何 で ある か 分かっ た とき ― 」
 473「 どのような こと ? 」
 474ナシャ は ドール の 手 から 手 を 抜い た 。
 475「 何 の 話 を し て いる の ?
 476あなた は まるで 、 テンス が 発見 し た もの を 知っ て いる か の よう に 行動 し て いる わ 。 」
 477「 そう だ よ 。 」
 478ドール は ナシャ に 微笑ん だ 。
 479「 こんな 伝説 を 思い出さ ない か 、
 480あらゆる 民族 に は 、 隠さ れ た 財宝 や 、 ドラゴン の 神話 、 そして 財宝 に 誰 も 近寄ら ない よう に 、 見守る 蛇 の 神話 が ある ん だ 。 」
 481ナシャ は 頷い た 。
 482「 それで ? 」
 483ドール は 大砲 を 指差し た 。
 484「 あれ が 」
 485ドール は 言っ た 。
 486「 その ドラゴン だ よ 、
 487さあ 、 行こ う 。 」
 488三 人 で 大砲 の カバー を ようやく 引っ張りはがし 、 わき に 置い た 。
 489ドール は 作業 を 終える と 、 汗 で ぐっしょり に なっ て い た 。
 490「 それ は 、 価値 は ない ね 」 と ドール は 不満 を もらし た 。
 491彼 は 、 あくび の 時 の 大きな 口 の よう な 穴 を 覗き込ん た 。
 492「 あるいは こっち かなあ 」
 493ナシャ は 手提げランプ の スイッチ を 入れ て 、 階段 を 照らし た 。
 494階段 は 埃 と 石 の 破片 で 厚み を 増し て い た 。
 495底 に 、 鉄 の 扉 が あっ た 。
 496「 来い よ 」
 497テンス が 興奮 し て 言っ た 。
 498テンス は 階段 を 降り 始め た 。
 499ドール と ナシャ は 彼 が 扉 に 到着 し 、 揚々 と 扉 を 開け よう と する の を 見守っ た が 、 扉 は 開か なかっ た 。
 500「 手 を 貸し て ! 」
 501「 了解 ! 」
 502二人 は 注意深く テンス の もと に やってき た 。
 503ドール は 扉 を 調べ た 。
 504扉 の 鍵 は 、 ボルト で 締め られ て い た 。
 505扉 に 何 か 文字 が 刻ま れ て い た が 、 ドール は 解読 でき なかっ た 。
 506「 ねえ 、 何て ? 」
 507ナシャ が 言っ た 。
 508ドール は ハンドガン を 取り出し た 。
 509「 下がっ て 」
 510「 この 方法 しか 思い浮かば ない ん で ね 。 」
 511彼 は スイッチ を 押し た 。
 512扉 の 下 の ほう が 赤く 発光 し た 。
 513やがて 光 は 消え 始め た 。
 514ドール は ハンドガン の スイッチ を 切っ た 。
 515「 これ で 入る こと が できる と 思う よ 、
 516さあ 、 やっ て み よう 」
 517扉 は 簡単 に バラバラ に なっ た 。
 518彼ら は 、 バラバラ に なっ た 扉 の 破片 を 数 分 で 運び 、 階段 の 一 段目 に 積ん だ 。
 519三 人 は 行き先 を ライト で 照らし ながら 、 先 を 進み 続け た 。
 520彼ら は 地下貯蔵庫 に い た 。
 521埃 が あたり 一面 に 、 あらゆる ところ に 、 2 、 3 センチ 積もっ て い た
 522木箱 が 壁際 に 並ん で い た 、
 523大きな 箱 、 木枠 、 小荷物 、 コンテナー が あっ た 。
 524テンス は 目 を 輝か せ て 、 物珍し そう に あたり を 見回し た 。
 525「 一体 これら 全部 は 何 な ん だ ? 」
 526テンス は つぶやい た 。
 527「 いくら か 価値 の ある もん だろう な 。 」
 528テンス は 丸い 缶 を 拾い上げ 、 ふた を 開け た 。
 529フィルム が 床 に 落ち 、 黒い リボン が ほどけ た 。
 530彼 は それ を 光 に 照らし て 、 調べ た 。
 531「 これ を 見 て くれ ! 」
 532ドール と ナシャ は テンス の そば まで やってき た 。
 533「 写真 だ わ 。 」
 534ナシャ が 言っ た 。
 535「 小さな 写真 だ わ 。 」
 536「 何 か の 記録 だ ね 。 」
 537テンス は フィルム を 缶 に 再び しまっ た 。
 538「 見ろ 、
 539何百 も の 缶 が ある 。 」
 540テンス は あたり を ライト で 照らし た 。
 541「 それと 木箱 、
 542ひと つ 開け て み よう 。 」
 543ドール は すでに 覗い て い た 。
 544木製 の 部分 は もろく 、 乾燥 し て い た 。
 545彼 は なんとか ひと つ 引っ張り出し た 。
 546写真 が あっ た 。
 547青い 服 を 着 た 、 楽しげ に 微笑み 、 じっと 正面 を 見つめる 、 若く て 、 ハンサム な 少年 が 写っ て い た 。
 548少年 は まるで 生き て いる よう で 、 手提げランプ の 光 に 照らし出さ れ た 彼ら の 方 へ 、 今 に も 向かっ て き そう な ほど で あっ た 。
 549少年 は 、 零落 し た 民族 、 滅亡 し た 民族 の ひとり で あっ た 。
 550長い 間 、 三 人 は 写真 を 見入っ て い た 。
 551ようやく ドール が もと に 戻し た 。
 552「 他 の 木箱 の 中 に も 、 」
 553ナシャ が 言っ た 。
 554「 もっと 写真 が ある わ よ 。
 555それに これら の 缶 、 箱 の 中身 の
 556何 かしら ? 」
 557「 これ は 彼ら の 宝物 だ よ 。 」
 558テンス が 、 ほとんど 独り言 の よう に 言っ た 。
 559「 彼ら の 写真 や 記録 が ここ に は ある ん だ 。
 560おそらく 彼ら の 著述書 の 全て が ここ に ある 。
 561彼ら の 物語 、 神話 、 宇宙 について の 思想 。 」
 562「 そして 彼ら の 歴史 。 」
 563ナシャ が 言っ た 。
 564「 私たち は 彼ら の 進歩 を たどる こと が 出来る でしょう 、
 565そして 何 が 彼ら を 彼ら で あら しめ た の か が わかる でしょう 。 」
 566ドール は 地下室 を 歩き回っ た 。
 567「 変 だ な 。 」
 568彼 は 呟い た 。
 569「 最後 の 時 でさえ 、 戦い を 始め た 後 でさえ 、 彼ら は 心 の どこ か で 、 彼ら の 本当 の 宝物 は 、 本 、 写真 、 神話 で ある こと を わかっ て い た 。
 570彼ら の 大都市 や 建物 、 産業 が 破壊 さ れ た 後 でさえ 、 おそらく 彼ら は ここ に もどれ ば 、 この 宝物 を 見つける だろう と 希望 を 持っ て い た 。
 571たとえ 他 の 物 全て が 消え て しまっ て も 。 」
 572「 私たち が 家 に 帰っ た 時 、 ここ へ の 任務 を アピール する こと が 出来る 。 」
 573テンス が 言っ た 。
 574「 ここ の 全て を 船 に 積ん で 持ち帰る こと が 出来る よ 。
 575我々 は 出発 する だろう よ 、
 576およそ ― 」
 577テンス は 言う の を 止め た 。
 578「 そう だ 、 」
 579ドール が 淡々 と 言っ た 。
 580「 我々 は 今 から 約 三 日間 で ここ から 離れる こと に なる 。
 581船 を 修理 し 、 それから 出発 だ 。
 582そう すれ ば 、 もう すぐ に 家 だ よ 、
 583つまり 、 何 も 起こら なけれ ば 、 あれ によって 撃ち落とさ れる よう な こと が なけれ ば ね 。 」
 584「 もう 、 やめ て ! 」
 585ナシャ が 我慢 でき ずに 言っ た 。
 586「 彼 を ほっ とい て あげ て 。
 587彼 は 正しい わ 。
 588ここ に ある 全て を 、 遅かれ早かれ 、 持っ て 帰る の でしょう 。
 589そして 私たち は 大砲 の 問題 を 解決 する でしょう 。
 590私たち に 選択肢 は ない わ 。 」
 591ドール は 頷い た 。
 592「 それなら 、 君 の 解決 って の は 何 だい ?
 593地面 から 離れ た 途端 、 撃ち殺さ れる ん だ よ 。 」
 594ドール の 顔 は かすか に ゆがん だ 。
 595「 彼ら は 上手 すぎる 方法 で 宝物 を 守っ て き た ん だ よ 。
 596それ は 、 状態 は 維持 さ れ ない ので 、 朽ち果てる まで 、 ここ に あり 続ける だろう 。
 597かれら に 奉仕 し て いる ん だ よ 。 」
 598「 どういう こと ? 」
 599「 わから ない かい 。
 600これ が 唯一 、 彼ら が わかっ て いる こと 、
 601つまり 大砲 を 組み立て 、 やってくる 全て に対して 攻撃 できる よう に 照準 を 定める 。
 602彼ら は 全て が 敵 で あり 、 敵 とは 彼ら の 所有物 を 奪い に 来る もの だ と 確信 し て い た ん だ 。
 603こうして 彼ら は 彼ら の 運命 を 保つ こと が できる ん だ 。 」
 604ナシャ は 深く 考え込ん で しまい 、 心 が ここ に なかっ た 。
 605突然 ナシャ は 息 荒く 言っ た 。
 606「 ドール 」
 607「 私たち は どういう 状況 に いる の ?
 608私たち に は 何 の 問題 も ない わ 。
 609大砲 の 脅威 も ない わ 。 」
 610男性 二人 は ナシャ を 見つめ た 。
 611「 脅威 が ない だって ? 」
 612ドール が 言っ た 。
 613「 一 度 我々 は すでに 撃た れ て いる ん だ よ 。
 614「 それに 再び 離陸 する や否や ― 」
 615「 わから ない の ? 」
 616ナシャ は 笑い だし た 。
 617「 かわいそう な まぬけ な 大砲 よ 、
 618完全 に 害 は ない わ 。
 619私 ひとり で も 対処 できる わ 。 」
 620「 君 が ? 」
 621彼女 の 瞳 が 輝い て い た 。
 622「 バール 、 ハンマー 、 棒 が あれ ば ね 。
 623さあ 、 船 に 戻っ て 、 仕事 よ
 624もちろん 空中 で は 、 私たち は 彼ら の 手中 に いる わ 、
 625そう する よう に 仕向け られ て いる から ね 。
 626大砲 は 空 に向かって 発射 し 、 飛ん で いる もの なら なん でも 撃ち落とす わ 。
 627でも それ だけ の こと よ ! 」
 628地上 の もの に対して 、 防御 し ない の よ 、
 629でしょう ? 」
 630ドール は ゆっくり 頷い た 。
 631「 ドラゴン の 泣き所 。
 632伝説 で は 、 ドラゴン の 甲冑 は ドラゴン の 腹部 を 防御 し て い ない 。 」
 633ドール は 笑い だし た 。
 634「 確か に !
 635確か に 完全 に 正しい よ 。 」
 636「 さあ 、 行き ましょ う 」
 637ナシャ が 言っ た 。
 638「 船 に 戻り ましょ う 。
 639ここ で する こと が ある から ね 。 」
 640三 人 が 船 に 到着 し た の は 、 翌早朝 で あっ た 。
 641夜 の 間 に キャプテン は 亡くなっ て い た 、
 642そして クルーたち は 慣例 に 従い キャプテン を 火葬 し た 。
 643彼ら は 最後 の 残り火 が 消える まで 、 厳粛 に 立ち 続け て い た 。
 644彼ら が 仕事 に 戻ろ う と し て い た とき 、 女性 ひとり と 男性 二人 が 姿 を みせ た 。
 645三 人 は 汚れ て 、 疲れ て 、 しかし 興奮 冷め やら ぬ 様子 だっ た 。
 646まもなく 船 から 一 列 に 並ん だ 人たち が やってき た 。
 647おのおの 手 で 何 か を 運ん で い た 。
 648行列 は 灰色 の 岩滓 を 横切り 行進 し た 、
 649そこ は 熔解 し た 金属 が 永遠 に 広がっ て い た 。
 650彼ら が 兵器 まで 到着 する と 、 ただちに 大砲 に 向かっ て 行っ た 、
 651バール 、 ハンマー など 重く て 硬い もの なら なん でも 手 に し て い た 。
 652望遠つき の 照準器 は 粉々 に 砕け て い た 。
 653配線コード は 引っ張り出さ れ て 、 バラバラ に なっ て い た 。
 654繊細 な ギア は 打ち砕か れ 、 凹ん で い た 。
 655ついに は 、 弾頭 は 奪わ れ 、 撃針 は 外さ れ た 。
 656大砲 は 打ち壊さ れ た 、
 657巨大兵器 は 破壊 さ れ た 。
 658人々 は 地下 に 降り 、 宝物 を 調べ た 。
 659鋼鉄 で 武装 し た 監視者 の 死 を 持っ て 、 危険 は もはや 無くなっ た 。
 660彼ら は 写真 、 フィルム 、 本箱 、 宝石 の つい た 王冠 、 杯 、 像 など を 調査 し た 。
 661ついに 、 太陽 が 、 惑星 の 中 を 漂い 灰色 の 霧 の 中 に 現れ た 時 、 彼ら は 再び 階段 を 上っ た 。
 662数 分間 、 彼ら は 、 割れ た 大砲 の 動か なく なっ た 外殻 を 見 ながら 、 その 周り に 立っ て い た 。
 663それから 、 彼ら は 船 に 戻り 始め た 。
 664船 で は する こと が 山 ほど あっ た 。
 665船 は ひどく 傷つけ られ 、 多く の 被害 を 受け 、 多く を 失っ た 。
 666肝心 な こと は 、 船 を 飛びたてる よう に 、 できるだけ 素早く 修復 する こと で あっ た 。
 667全人力 を かけ た ので 、 船 が 宇宙 に 適応 する よう に なる の に 、 もう 5 日間 要し た だけ だっ た 。
 668ナシャ は コントロールルーム から 、 惑星 が 船 の 下方 に 消え て いく 姿 を 見 て い た 。
 669彼女 は 腕組み を し て 、 テーブル の 端 に 座っ て い た 。
 670「 何 を 考え て いる ん だ ? 」
 671ドール は 言っ た 。
 672「 私 ?
 673何 も 。 」
 674「 本当 に ? 」
 675「 あの 星 が 全く 違っ た 様子 の 時代 が 、 生命 が 生存 し て い た 時代 が きっと あっ た ん じゃ ない か と 考え て い た の 。 」
 676「 僕 も そう 思う よ 。
 677我々 の システム を 持つ 船 が 、 こんな 遠く まで に 来 なかっ た こと が 不幸 な こと だ 。
 678でも 宇宙空間 で 核分裂 の 放つ 光 を みる まで 、 知的生命体 の 存在 を 疑う 理由 は なかっ た から ね 。 」
 679「 もう 遅 すぎ た わ 。 」
 680「 いや 、 まだ 遅 すぎ ない よ 。
 681結局 彼ら の 所有物 で ある 、 音楽 、 本 写真 、 すべて が 生き 抜く だろう 。
 682我々 は それら を 地球 に 持っ て 帰り 、 研究 する ん だ よ 、
 683そして それら が 我々 を 変える ん だ 。
 684我々 は もう 昔 と 同じ じゃ ない 。
 685彼ら の 彫刻技術 は 特に 、
 686頭 と 腕 の ない 巨大 な 翼 を 持つ 生き物 を 見 た かい ?
 687頭 と 腕 は 砕か れ た ん だろう ね 。
 688でも その 翼 は 、 きっと 古い もの だろう ね 。
 689それ は 我々 を 大いに 変え て くれる だろう 。 」
 690「 あの 星 に 戻っ て も 、 私たち を 待ち構え て いる 大砲 は もう ない わ 」
 691ナシャ が 言っ た 。
 692「 次 の 時 に は 、 大砲 は 私たち を 撃ち落とす ため に ある ん じゃ ない 。 」
 693彼女 は ドール を 見上げ て 、 微笑ん だ 。
 694「 あなた が 私たち を あの 星 に 率い て いく の よ 、 立派 な キャプテン として 」
 695「 キャプテン ? 」
 696ドール は にやりと し た 。
 697「 君 が 決め た ん だ ね 。 」
 698ナシャ は 肩 を すくめ た 。
 699「 フォーマー は 私 と よく 議論 する の 、
 700やっぱり あなた の 方 が いい と 思う わ 。 」
 701「 行こ う 、
 702地球 に 帰ろ う 。 」
 703ドール が 言っ た 。
 704船 は エンジン音 を 上げ て 、 廃墟 の 都市 の 上空 を 飛行 し た 。
 705船 は 大きく 弧 を 描き 、 宇宙空間 を 目指し 、 惑星 の 地平線 から 飛ん で 消え た 。
 706船 の 下方 、 廃墟 の 都市 の 中心部 で 、 一 枚 の 半壊 し て いる 探知機 の 翼 が かすか に 動き 、 船 の エンジン音 を 捕え た 。
 707巨大 な 大砲 の 台座 は 、 痛々しく 鼓動 し 、 懸命 に 回転 し よう と もがい て い た 。
 708瞬間 、 赤い 警告ライト が 、 破壊 さ れ た 内部 の 下方 で 光 を 放っ た 。
 709都市 から はるか かなた 100 マイル 離れ た 位置 、 地下深い ところ で 別 の 警告ライト が 光っ た 。
 710その 動き は 自動的 に 連続 し て い た 。
 711ギア は 回り 、 ベルト は キイキイ と 鳴き声 を 上げ た 。
 712金属 の 鉱滓 が 滑り落ち た 地面 に ランプ が 現れ た 。
 713少し たっ て 小さな カート が 正面 に向かって 走っ て き た 。
 714その カート は 都市 へ と 方向転換 し た 。
 715次 に 来 た カート は 最初 の カート の 背後 に 現れ た 。
 716二 番目 の カート に は 配線ケーブル が 積ま れ て い た 。
 717その 後ろ 、 三 番目 の カート は 望遠鏡 の 円筒状 の 照準器 を 運ん で い た 。
 718そして 後 から 後 から カート が やってき 、 継電器 を 積ん で いる もの や 、 発射制御装置 を 積ん で いる もの 、 また ツール と パーツ 、 スクリュー と ボルト 、 ピン と ナット を 積ん で いる もの も あっ た 。
 719最後 の カート に は 原子弾頭 も 含ま れ て い た 。
 720カート は 第一 番目 の カート を 先頭 に 整列 し た 。
 721先頭 の カート が 動き だし 、 凍結 し た 地面 を 小さく 跳ね ながら 横切り 、 残り の カート が それ に 続い た 。
 722カート は 都市 を めざし 、 破壊 さ れ た 大砲 へ と 進行 し た 。